三菱マテリアル <5711> の環境リサイクル事業室では、使用済み家電製品から、レアアースを使用した高性能なNd-Fe-B磁石を回収・再資源化するための技術開発を実施している。
Nd-Fe-B磁石はハイブリッド自動車・電気自動車や省エネ型の家電製品に使用されており、我が国におけるこれら製品の製造や、ひいては低炭素化の推進にも欠かせない。しかし、その材料となるネオジム(Nd)、ディスプロシウム(Dy)などのレアアース元素は希少性・偏在性が高く、枯渇可能性や価格高騰などの問題を抱えているため、リサイクルシステムの早急な構築が望まれていた。また、レアアースは鉱石中の品位が低いため、採取の際に大量の廃棄物を発生。リサイクルを実現できれば新たな資源の採掘量を減らすことができ、循環型社会の構築にも大きく貢献できると期待されている。
同社では、大手家電メーカーとの合弁事業として、家電リサイクル事業を5社6工場で展開。昨年度は、現在家電リサイクル工場で処理されている使用済みのエアコンおよび洗濯機を対象としてNd-Fe-B磁石を搭載した製品の調査を行い、エアコンで約6%、洗濯機で約1%にこの磁石が使用されていることが判明している。
また、現在販売されている製品における使用割合はさらに増加しており、2007年度に国内出荷された740万台のエアコンのうち約60%にNd-Fe-B磁石が使用(日本冷凍空調工業会調べ)。それらがリサイクルされる10年後には年間400トンを超えるNd-Fe-B磁石が回収可能との試算結果も出たという。また、この磁石を回収するためには、エアコンのコンプレッサーや洗濯機のモーターを分解する必要があり、実際にこれらを分解し、Nd-Fe-B磁石を効率的に回収するための分解プロセスについて技術開発を行っている。
昨年度は経済産業省の補助金により調査を進めたが、本年度はNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として研究開発を継続することが決定。引き続き同社とパナソニック <6752> の共同出資会社であるパナソニックエコテクノロジー関東などの協力を得ながら、さらに効率的な分解・Nd-Fe-B磁石回収プロセスの開発を実施。リサイクルコストの削減のため、分解の自動化を目指す。
なお、今後は元格的な事業化を見据え、回収したNd-Fe-B磁石をどのような形状で磁石合金メーカーに提供するかという点についても検討を進めていくという。
(編集担当:宮園奈美)