近年、電子機器および自動車部品の市場では、パワー半導体の高密度化が急速に進んでいる。それに伴って、これまで以上に重要な課題となっているのが、電子部品の熱対策だ。
電子機器における熱制御は、製品の「寿命」と「性能」を維持するために避けては通れない。過度な発熱は故障や製品寿命の低下を招くだけでなく、機器の誤作動や発火リスクにも直結するため、設計者にとって熱のコントロール(熱設計)は最優先課題となっている。ところが、電子部品の小型化・高性能化に伴って製品内の放熱面積は小さくなる一方で、特定箇所に熱が集中する「ホットスポット」が発生するなど、設計限界を超えるケースも多発している。さらに急速な生成AIの発展と普及によって、データセンターの負荷は急拡大し続けているし、車載分野では、EV(電気自動車)の普及に伴うパワーデバイス需要の増加や、車載制御ユニット(ECU)には従来の数倍の処理が求められるなど、電子部品業界は今、かつてないほどの「発熱問題」に直面しているのだ。
これまでの放熱対策では不十分なのだろうか。
従来の放熱対策は、アルミ製ヒートシンクや熱伝導シート、液冷モジュールといった、部材を追加する方法が主流だが、これらの手法では、すでに様々な面で限界が生じ始めているという。まず、放熱シートなどの部材は部品ごとに形状を合わせる必要があり、複雑な形状への対応が困難で、設計の自由度が損なわれてしまうという点。そして、小型化が進む現代のデバイスでは、厚みのある部材を追加する物理的なスペースを確保することが難しくなりつつあるという、スペースの制約上の問題。さらに、ヒートシンクなどは空気の対流に頼る部分が大きく、対流のない閉鎖空間や真空状態では十分な能力を発揮できないことなどに加え、部材市場自体も年率6~7%で成長しており、各分野で解決すべき課題が山積している状況だ。
そんな中、こうした課題を一気に打破する革新的な技術として大きな期待を集めているのが、帝人フロンティア株式会社が2025年10月に発表した放熱塗料「ラジエックス(Radi-ex)」だ。同製品の最も注目すべき点は、「塗布」することで放熱するという新しい視点のものであることだ。
「ラジエックス」は、高い放熱性能を持つグラフェン粒子(粒径 5〜15μm)を含む複数の高熱伝導フィラーを塗料内に均一に分散させることで、高い熱伝導性を実現。さらに、形状の異なるフィラーを混合させることで生じる塗膜表面の微細構造が赤外線放射を促進し、放射率を高めることに成功している。
また、同社の調べでは、非シリコーンの高耐熱樹脂を使用することで、−40℃〜200℃の温度環境や高湿度条件でも剥離せずに、高い密着性と耐久性能を有している上、塗膜形成が容易で、部品の形状に左右されず、安定した塗膜性能を発揮できるという。
高い放熱性を発揮できることで、「ラジエックス」を塗布した製品や部品では、回路パターンや電子部品の簡素化および、小型化への仕様変更、それらの設計の合理化、電子部品の温度低減による消費電力削減などが期待できる。何より、既存の製品に後から塗るだけで試行できるので、大幅な設計変更を伴わずに温度低減効果が得られる点は、多くの設計者から高い支持が得られるだろう。
しかも、車載分野やデータセンターだけに留まらず、スマートフォンやPC、白物家電など、熱対策ニーズの高いあらゆる分野への応用が可能だ。近年、充電池やモバイルバッテリーの熱膨張や発火などが、度々、ニュースになっているが、こういったものにも応用されて普及が進めば、より安全で安心して使用することができるようになる。
帝人フロンティアは、2026年度中に、塗装面がアルミニウムや銅などの金属である、電子機器や電子機器が搭載された製品向けに販売を開始する予定で、今後は樹脂部品にも塗装可能な製品開発を進めていくという。電子機器の熱対策は日本だけでなく、世界的な課題。今後のグローバルな展開も楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)













