【コラム】非核三原則堅持は法の秩序と平和外交の裏付け

2026年01月11日 09:01

EN-a_036

武力で「法の支配」が歪められれば「武力大国」により「世界の秩序、民主主義が壊滅的に崩壊する」

 ロシアによるウクライナ侵略、米国による南米ベネズエラへの爆撃・マドゥロ大統領拘束などの事案を捉え「核」を是とする論者から「ウクライナも、ベネズエラも『核』を保有していれば今回の事態にならなかった」との意見が出され、報道されたりする。

 ロシアや米国の行為に、核保有、核共有、核を背景にした「抑止力強化」と結びつけるのは「法の支配」や「平和外交」を国是とし、世界で唯一の戦争被爆国として核軍縮を世界に呼びかけてきた戦後の日本の歩みを真っ向から「無」にする自殺行為と認識しなければならない。

 ベネズエラのマドゥロ大統領が不正工作なく続投できたのかどうかは別として、同国のモンカダ国連大使が国連安保理の場で「米国の行為は国連憲章に明確に違反」と指摘し「国家元首の誘拐、主権国家への爆撃が軽視されれば、武力が国際関係の真の権威という壊滅的メッセージを世界に伝えることになる」と指摘した正しさには誰もが反論できないだろう。

 武力で「法の支配」が歪められれば「武力大国」により「世界の秩序、民主主義が壊滅的に崩壊する」。

 高市早苗総理は7日、岩澤雄司・国際司法裁判所(ICJ)所長、赤根智子・国際刑事裁判所(ICC)所長の表敬を受けた際に「国際社会における法の支配の維持・強化に向けてこれからも日本は両裁判所をしっかり支援していく。頑張ってほしいと心からのメッセージをお伝えした」とXで発信した。

 「法の支配」「平和外交」を「核」を背景に担保するようなことはあってはならない。直近、危惧する発言が出ている。官邸幹部の「日本は核を保有すべき」との発言に象徴されるが、「核保有・米国との核共有」「日本領土に核配備を許す」などの発想が防衛省幹部や防衛大学校長経験者らから過去に表明されていたことには驚きと憂慮しかない。

 2022年12月6日付け産経新聞は統合幕僚長をつとめた河野克俊氏が米国の核兵器を日本の領土・領海内に配備し共同運用する「核共有」をタブー視せず議論すべきと12月5日の「京都『正論』懇話会」で提起したと紹介している。防衛トップ経験者がこうした発言をしてきたことの影響は大きい。ロシアによるウクライナ侵略が環境を変えていった時期と重なる。

 また「自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える安保・防衛問題の専門紙」とされる「朝雲」に防衛大学校校長もつとめた西原正氏が「日米安保60年」の寄稿文で「日本のこれまでの外交の弱点は、外交を支える防衛力(相手に対する威嚇力)の不足にあった」(2020年の9月10日付け)と防衛力を「相手に対する威嚇力」と注釈する認識を示していた。憲法が禁じる『威嚇』による外交交渉を是とするような記述といえよう。「日本は『普通の国』に近づくことを怖れるべきでない」とも明記している。こうした発想の人たちが日本の安保・防衛リーダーとしてかかわってきたのかと危機感を持つ。

 憲法学者の木村草太・都立大教授は米国との核共有が語られ始めた22年ころ「日本は核不拡散条約加盟国で核保有はできない。条約を破れば、唯一の戦争被爆国としての立場を自らおとしめるだけ」と指摘した。「核兵器を配備しても核使用の最終決定はアメリカ大統領であり、配備された核は攻撃目標や侵略の口実になるし、地域の緊張を高める」と警告している。

 米国の戦争の歴史をみればわかるように、ベトナム戦争、イラク戦争など多くが「米国による先制攻撃」で始まっていた。南米ベネズエラへの爆撃・大統領拘束は麻薬を理由にしているが、石油利権は明らかになっている。ベネズエラは「少なくともアメリカの攻撃で民間人含め100人が死亡」と公表した。

 SNSでは米国の行為に理解を示す声もあるが「武力で相手を圧倒するのは野蛮極まりない」「こういう大国の暴挙で世界はより一層不安定になっていきそう」「武力を背景にした屁理屈は中国と変わらん。アメリカの支配は良く、中国に支配されるのが嫌なのか理解出来ない。常識的に考えたら、米中共にダメだろう」の投稿も。

 日本はトランプ政権追従の外交路線であってはならないだろう。トランプ大統領は「力による平和」と露骨に武力を背景にする発言を繰り返すようになっている。日本は一定の距離感を持って「自立した国」としての立ち位置、意思表明をすべきで、高市政権にはその知恵と勇気を求めたい。「いかなる国も、武力によって現状変更することは許されないし、あってはならない」。

 世界をリードする平和国家として、日本はいかなる時も、非核三原則を堅持することが「法の秩序」と「平和外交」を裏付けることにつながることを強調しておきたい。「核持ち込み」を許せば「核共有」「核の保持」「核製造」まで歯止めがかからなくなるだろう。「唯一の戦争被爆国」として「普通の国」になってはいけない。(編集担当:森高龍二)