電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハ発動機<7272>がPASの2013年モデルを5タイプ発表した。PAS ナチュラ L、PAS ナチュラ Lデラックスは3月14日、PAS CITY-L、PAS CITY-S(いずれも27型)は3月29日、PAS Ami(26)型は3月31日より発売している。
今回の5機種はいずれもトルクセンサー、スピードセンサー、クランクセンサーの3つのセンサーで走行状況をきめ細かく感知し、パワフルさはそのままに従来のダブルセンサーモデルよりもスムーズな走行を可能にしている。またトリプルセンサー搭載モデル搭載モデル専用に新タイプのスイッチを導入。強、標準、エコのそれぞれのモードで、あとどれだけ走れるか、バッテリー残量を残り走行距離でも表示できるようになった。またPAS ナチュラ Lシリーズの24型では専用設計することで足つきがさらによくなっているという。
ところで同社では今回のトリプルセンサー搭載モデルの新発売に先立って、3月14日、15日に東京の国立霞ヶ丘競技場で記者発表とマスコミ向け新モデル試乗会を行った。その席上、同社の柳弘之社長は、同社の電動アシスト自転車の完成車と電動アシスト自転車用システムキットの年間販売規模を「2015年までに国内外(中国の電動自転車も含む)100万台規模まで成長させる」と柳社長は明言している。
2012年の電動アシスト自転車の市場規模は日本国内が約40万台といわれているにも関わらず強気とも取れる目標だが、それには理由がある。実は2011年に発生した「震災需要」の反動で、それまで2000年以来右肩上がりで伸びてきた出荷台数が2012年は減少に転じた。が、同社のPASは2012年モデルのPAS Kiss miniとPAS Babbyが大ヒット。逆に出荷台数と国内シェアを伸ばしている。「世界初の電動アシスト自転車の初代PASを1993年に発売して以来、けっして順風満帆ではなかったものの、私たちが市場をけん引してきたという自負があります。常に進歩を怠らなかっただけでなく、時代も電動アシスト自転車をはじめとするスマートビークルに追い風であることは確かです。国内販売は年によって多少風邪気味になることはあっても、年3~8%のペースで大きくなっていくはずです。ずいぶん強気だと思われるかもしれないけれど、国内の完成車でシェア30%、国内のシステムは50%を達成目標に掲げました。それはけっして絵空事を数字にしたわけではありません」と森本事業部長は語った。
また、PASにはスポーティタイプ、ビジネスタイプ、実用車タイプなど様々なバリエーションがあるが、今回追加のPAS Amiでは、「女子中高生たちの日常の足として電動アシスト自転車の楽しさを知ってもらいたい」という。そのため女子高生に人気のモデル、くみっきーこと舟山久美子さんをPAS Amiのイメージキャラクターに起用。女子中高生への訴求を行っていくことも同時に発表している。
一方海外に目を転じると、特に欧州各国での電動アシスト自転車の需要が高まっているという。現在、同社製の電度アシスト自転車用システムキットを、GIANT ELECTRIC VEHICLE社、ドイツのWINORA社、フランス、オランダ、ベルギーに広い販路を持つCycle Vision社への供給契約を結んでいる。同社の電動アシスト自転車用システムは、センターモーター式で、前輪式、後輪式と比べて最も効率のよいシステムだといわれている。このシステムが欧州でスタンダードになる可能性は小さくはないだろう。この日の柳弘之社長の言葉ではないが、電動アシスト自転車のパイオニアであるヤマハ発動機には、このジャンルでも世界をけん引する可能性が感じられる。(編集担当:帯津冨佐雄)