積水ハウス<1928>は、今月9日に行った決算発表において2011年1月期第2四半期業績が前年同期に比べ大幅な増収増益になったと発表。その最も大きな要因について「グリーンファースト戦略が好調を維持している」と発表したが、そもそも「グリーンファースト」とはどういったものなのだろうか。
積水ハウスが推進するグリーンファーストとは、同社が提案する環境配慮型住宅を中心とした取り組みの総称である。「快適性」「経済性」「環境配慮」という3つのメリットをコンセプトに、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせることで光熱費を大幅に削減するとともに、居住時のCO2排出量を50%以上削減し地球温暖化の防止に貢献することを大きな狙いとしている。この狙いを実現するのが、太陽光発電システムや家庭用燃料電池の「創エネ」技術だ。さらに、太陽光発電システムを瓦一体型にするなど住宅全体のデザイン性も考慮し、景観面で周囲の環境と調和させることで、”長く住み続けること”ができる住宅づくりにもこだわっている。
積水ハウスのグリーンファーストは、市場の環境意識の高まりを背景に2009年3月の発売以来順調に受注を伸ばし、最近では戸建住宅の受注の約7割を占める。2009年度の戸建太陽光発電システムの契約実績は、当初の目標である6,000棟を大きく上回る7,030棟に達した。それを受け、2010年度は目標を10,000棟としたが、中間実績で5,511棟と、すでに55.1%の進捗率を示している。さらに太陽光発電システムを設置した賃貸住宅「シャーメゾン グリーンファースト」も、371棟の前年実績を上回る391棟を中間実績で記録するなど、まだまだこの勢いは持続しそうだ。
しかし、グリーンファーストの取り組みはそういった住宅そのものに搭載するハード技術だけではない。環境に対する配慮をトータルで提案していることが大きな特長である。そもそも、積水ハウスがグリーンファースト戦略を推進する理由は、地球温暖化や生態系の破壊など、地球規模の環境破壊に対し、日本の住宅産業のリーディングカンパニーとして何ができるのか、ということを考えたことに起因する。現在、多くの産業分野では、各企業の努力によりCO2排出量に減少傾向が見られるが、一般家庭から出るCO2の排出量は増加し続けており、国をあげた対策が求められている。
各住宅メーカーがCO2排出量を低減する住宅をこぞって開発・販売する中、同社が最も重視しているのは、環境配慮型住宅をいかに世の中に普及させるか、言い換えれば、いかに顧客からの支持を得られる商品を販売するか、ということだ。快適な暮らしを望む顧客の要望を第一にプランニングし、それに今ある様々な環境配慮技術や提案を組み込んでいくことで、これまでと変わらない生活をしながらも経済的で環境に配慮した暮らしができる住宅の提案に力を注ぐ。大容量の太陽電池パネルを搭載するために屋根ばかりが大きく目立つ住宅や、最新のハイテク技術ばかりを寄せ集めた住宅など、顧客の快適性をないがしろにした住宅は普及しないと同社は考える。
また、窓の大きさや配置、軒の出などを適切に設計することによって、風通しや日当たりをコントロールする親自然な空間提案なども行っている。建築した住宅の庭に自生種や在来樹種を植えることによって自然生態系を取り戻そうとする「5本の樹」計画も、植栽する位置を工夫することで風の通り道をつくり室内に快適な風を取り込むことができる。
同社の家づくりにはそういったコンセプトがあるからこそ、すべてのシステムは環境に配慮していながらも第一に”顧客目線”を貫くことができる。今ある高い技術を使って環境にも優しく、しかしあくまでも住む人にとって快適な住宅であることがグリーンファーストの意義であり、そんな積水ハウスの思想と顧客のニーズがマッチしていることが現在の好調につながっているのではないだろうか。
(編集担当:上地智)