凸版印刷<7911>は、450℃の高温に耐える超耐熱ICガラスタグの試作品を世界で初めて完成した。
近年は様々な業界において、過酷な環境下でのICタグの利用ニーズが高まっており、特に造船業界では部材の品質管理と効率的な運用のために、 高い耐久性と耐熱性のICタグが求められている。船舶にはおよそ6,000~10,000本の造船パイプが使われており、その半数以上に防食を目的とした「溶融亜鉛めっき処理」が施工。同処理前までは、これらのパイプは印字や刻印による固体識別ができるが、処理後は表面がめっきで隠れるため、部品名(固体識別番号)が不明となり、作業者は形状・寸法などを手がかりに、目視による仕分けをしているのが現状だ。
この仕分け作業が煩雑で時間がかかること、また効率的な作業には広いスペースが必要にも関わらず作業場所の確保が困難なこと、そして人為的ミスが発生してしまうことが建造作業の効率化の妨げとなっている。造船パイプの仕分け現場では、1本あたりの仕分けに5分程度の時間を費やしているが、ICタグを使うことで、1分以内の仕分けが実現可能になり、人為的ミスも大幅に解消できると見込んでいる。
ICタグは、もともとメーカーの保証温度が100℃程度であることから、チップを耐熱保護加工しても約200℃程度の耐熱が限界だった。そのためこれまでは450℃近い温度が発生するめっき処理の環境下でICタグを利用することはできなかったという。
同社は、財団法人日本海事協会および株式会社新来島どっくの共同研究事業である「耐熱無線通信タグ(溶融亜鉛めっき適用可)研究開発」に、2010年6月から開発協力のため参画。同事業の目的は、船舶の建造現場へ適用可能な作業性と、耐久性・耐熱性をあわせ持つICタグを開発することで、今回同社は日本板硝子 の技術協力を得ながら、超耐熱ICガラスタグの開発を実施、従来のICタグの約2倍となる450℃の耐久性を実現している。
なお、同社は作業中の振動や衝撃にもガラスが破損しない、2次加工技術の開発をしており、2011年度の量産化を目指す。
(編集担当:宮園奈美)