何度も利用したくなるユニークな自販機たち

2010年07月27日 11:00

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各地方の方言をしゃべる「おしゃべり機能付き自販機」を企画したダイドードリンコ企画開発部の谷澤輝彦氏。ユニークな自販機が誕生した経緯について語ってくれた。

 本格的な夏が到来し、ここ数日は日中の最高気温が30度を超える真夏日が続いている。猛暑の中、外を出歩くと、冷たい飲み物が欲しくなるだろう。そんな時、街の至る所にある自動販売機の存在は実にありがたい。夏には良く冷えた飲み物を、冬には温かいコーヒーやお茶を提供してくれる飲料自動販売機は、我々現代人の暮らしの中では欠かすことの出来ないもののひとつになっている。

 各メーカーが、自社の商品を販売するために自販機の展開に注力する中でも、ひと際異彩を放っているのが、大阪に本社を置く飲料メーカーのダイドードリンコ <2590> だ。売上の約9割が自販機での販売で占めているという同社は、ただ単にお金を入れると商品が出てくるというだけではなく、もっと付加価値のあるものを作りたいという考えのもと、個性的でユニークな自販機を展開している。1999年から導入された「ポイントカード自販機」は、商品を購入する際、専用のポイントカードにポイントを貯めて、応募すればもれなく景品がもらえるというもの。50ポイント~500ポイントまで、ポイント毎に様々な景品が用意されており、毎年セレクトし直しているという。この自販機が生まれたのは、それまで応募すれば抽選方式でプレゼントが当たるというキャンペーンが業界ではよく行われていたが、ごく一部の人にしか当たらないため、応募しても仕方がないと思っている人が多いのではないだろうかという社員の発想がきっかけになったという。利用者にとってはポイントを貯めればもれなく景品がもらえ、メーカーにとってはポイントカードにすることで自社の自販機を繰り返し利用してもらえる、どちらにとってもメリットの大きい仕組みになっている。

 そして、このポイントカード自販機のサービスを説明することを目的に音声ガイドを導入したことがきっかけとなり誕生したのが、方言をしゃべるユニークな自販機「おしゃべり機能付き自販機」だ。導入当初は、標準語だけだったが、後に関西弁の機能を追加し、その親しみやすい独特のイントネーションが大きな話題を呼んだ。その後は、京都弁、そして英語、ポルトガル語、中国語といった外国語までも機能に追加。2006年からは、津軽弁、名古屋弁、広島弁、博多弁、沖縄方言など各地の方言も追加され、利用者からのウケも上々だ。この「おしゃべり機能付き自販機」を開発した同社企画開発部の谷澤氏は「音声ガイダンス付きの自販機は、以前からありました。しかし機械的な声では購入者になかなか受け入れてもらえなかったのが事実でした。そこで、プロの声優さんにお願いし、実際に人間の声で語りかけるようなおしゃべり機能を入れたところ、購入者の方から予想以上の好リアクションを得ることができたのです」と話す。

 しかし、このおしゃべり機能付き自販機が凄いのは、各地方の方言や外国語をただしゃべるだけではなく、朝夕などの時間帯や、年末年始・クリスマスといった季節のイベントにも対応したフレーズを、状況に応じて各地域の言葉でしゃべるところ。さらに、ポイントカードのメモリー機能を利用して、「よくお会いしますね」とか「おひさしぶりです」など、ポイントカードの利用頻度に沿ったパーソナルなメッセージを発することもできるというから驚きだ。これなら、購入者は自販機をより身近に感じることができ、また利用したくなるだろう。

 大胆でユニークな発想、それを実現する行動力。自動販売機を店舗と位置づける同社の考えが、他社にはないコミュニケーションできる独自の自販機を生み出したのだろう。今でも、同社のホームページ上には、「今度は○○弁を」とか「東京で博多弁や津軽弁が聞けたりすると嬉しい」といったリクエストが多数寄せられているという。「もっともっとお客様とのコミュニケーションを深められるよう、新たな自販機をどんどん開発していきたいです」。どこか遊び心を感じさせる表情でそう語ってくれた谷澤氏の頭の中には、もう次のアイデアが浮かんでいるのかもしれない。
(編集担当:北尾準)