インドにおける女性の社会進出、そこをターゲットとしたヤマハの試みとは

2012年11月05日 11:00

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インド市場では女性ユーザーに合った扱いやすいコンパクトなモデルへの要望も高まっている。こうしたニーズを受けて、ヤマハ発動機のインド現地法人IYMでも初の女性向けスクーター「CYGNUS RAY」を投入している。

 新興国における早急な立て直しを迫られているヤマハ発動機。新興国では近年、女性の社会進出が進み、通勤や通学のためにスクーターを購入する女性が増加傾向にあるという。こうした傾向を受けてヤマハ発は、新興国の中でもタイと共に前年比増と予想されているインド市場において、女性をターゲットとした取り組みを積極化している。

 同社はこれまで、インドでは主に男性をターゲットにしたスポーツモデルを投入してきたが、スクータータイプの製品は販売していなかった。近年急速に拡大しているインドのスクーター市場に後発メーカーとして参入するにあたり、同社がターゲットにしたのが”若い女性”である。同国では男性向けや家族で共用することを想定した、比較的大柄な車格のスクーターが多い傾向が見られるなか、徐々に女性ユーザーに合った扱いやすいコンパクトなモデルへの要望も高まっており、こうしたニーズを受けて、ヤマハのインド現地法人IYMでも初のスクーター「CYGNUS RAY」を投入。デザインや新しさを重視する「若い女性」をターゲットに、スタイリッシュなデザインを持ち、コンパクトで扱いやすいモデルとなっている。

 「CYGNUS RAY」を市場に投入するにあたり、女性にその魅力を伝え、選んでもらうための課題は山積みであったという。そこで、女性は何を期待し、何を不安に感じているのか、女性へのヒアリングを実施。その結果、「きれいなお店に行きたい」「気軽に質問したい」「乗り方を教えて欲しいけれど、できれば女性に教えてもらうほうが安心」「故障したときの対応が心配」などという声が多く、店に行く際の不安を解消することが必要だとわかったという。

 そこで、女性が来店しやすいように専用のトイレを設置したり、気兼ねなくくつろげるような女性用ラウンジを設け、女性雑誌を置いたりと、店舗を女性に優しいものに変更。修理に訪れた女性客にも、バイクを預かった場合には近くのバス停まで送ったり、ロードサービスを充実させたりと、いざという時の不安を解消する工夫もしているとのこと。そして何より、「CYGNUS RAY」の導入に向け、販売店での女性スタッフの採用を積極的に推進し、約320人の女性スタッフを新たに採用。試乗に同行したり、手続きのサポートをしたりと、女性目線での取り組みが広がっている。

 米クレジットカード大手マスターカードが、日本、インド、オーストラリア、ニュージーランド、中国、香港、台湾、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムを対象として実施したアジア・太平洋の女性の社会進出に関する調査によると、「職場への進出」でインドは14カ国中最下位。男性を100とした場合の女性の割合は35.9と圧倒的な低さだったという。経済発展が進むにつれ、女性の職場への進出が増加することは想像に難くない。その為、市場としての潜在能力は非常に大きいと言えるのではないだろうか。この潜在能力をいかに引き出し、市場の拡大に繋げられるか。期待が高まるところであろう。