【日経平均】後場にあれよあれよと下落して14200円割れ

2013年05月09日 20:54

 NYダウは中国の貿易統計の好調ぶりが材料視され48ドル高で15100ドル台乗せ。ドイツのDAX指数も過去最高値を更新しており、株高の地球周回を止めるのはどこか。9日朝方の為替レートはドル円は99円近辺、ユーロ円は130円台前半。4月9日未明に初めて1ドル=100円に迫って以来、タッチできないままちょうど1ヵ月が経過した。その間、為替を置き去りに1000円を超える上昇を見せた日経平均は81.26円高の14366.95円で始まったが、前場は98円台で強含みになった円相場が足を引っ張り、14400円にタッチしては折り返す小動きに終始した。

 ところが後場は値下がり銘柄が増加して下落しはじめ、それが止まらない。その要因は午前中に発表された中国の4月の消費者物価指数(CPI)で、3月の2.1%、市場予測の2.2%を上回りインフレ懸念で上海市場も香港市場も軟調になった。韓国は据え置き観測が有力だった政策金利を7ヵ月ぶりに引き下げ2.5%とし韓国総合指数(KOSPI)が大きく上昇したが、利下げでウォンが安くなりライバルの韓国企業が息を吹き返すため日本の輸出関連銘柄には悪材料。TOPIXが先にマイナス圏に落ち、日経平均もその後を追って14350円→14300円→14250円→14200円を次々と割り込むという前日前場の上昇を鏡に映したような一本調子の下落ぶりで、終値は94.21円安の14191.48円で安値引けになり、株高の地球周回を東京が止めた。10日のマイナーSQ清算値14500円台を特定銘柄の派手な大量買いで演出する「指数操作ショー」のスイッチは最後まで入らずじまいで、14000円台に乗せていればSQ値は14250円程度でも満足という「意思」なのか。TOPIXも-12.51の1181.83で安値引け。売買高は38億株、売買代金は3兆1800億円だった。

 値上がり銘柄483に対し値下がり銘柄が1148もあり、業種別騰落率のプラスは情報・通信、証券、鉱業、卸売の4業種のみで、マイナスの下位はゴム、不動産、海運、倉庫、医薬品、ガラス・土石などだった。

 年初来高値更新が続出した情報・通信セクターは日経平均の押し上げ役になり、午後に発表された4月の携帯電話販売台数でもトップを堅持したソフトバンク<9984>は270円高で13年ぶりの高値。NTTデータ<9613>は営業増益の決算見通しがよく株式分割も発表したので一時ストップ高の31000円(9.9%)高。KDDI<9433>は80円高。84円高の電気通信工事のコムシスHD<1721>も含めると日経平均寄与度は+54円もあったが、後場の全面安には抗しきれなかった。その値動きの象徴が決算発表明けのトヨタ<7203>で、前場は一時130円高で年初来高値を更新しながら80円安で終えている。ダイキン<6367>は前期が15%の経常増益で今期の業績予想も市場予測を上回ったので240円の大幅高で年初来高値を更新し、日経平均に+9円寄与していた。

 業種別騰落率はプラスでも明暗が分かれたのが証券業界で、野村HD<8604>は27円高で年初来高値を更新し、売買高3位、売買代金1位と買いを集めたが、ネット証券のマネックスG<8698>は日経電子版で「オリックス<8591>が資本提携を解消し全株式を売却」というニュースが飛び出して急落し5350円(11.80%)安で値下がり率2位になった。オリックスの浦田晴之副社長は報道をただちに否定した。2006年1月17日の取引時間中、ライブドア株の信用担保力評価を突然ゼロにして株式市場を大混乱に陥れた松本大社長は、その時に損失を被った投資家から怨みを買っている。最終利益3.8倍という好決算の発表直後、同じ取引時間中というタイミングで水をぶっかけられ「天罰が下った」と思っている投資家は少なくないだろう。

 値上がり率上位銘柄はネット、ハイテク関連が多く、1位のネクシィーズ<4346>はネット接続、3位のローランドDG<6789>は3Dプリンタ関連銘柄、6位のサイバネットシシテテム<4312>は設計用CAEソフト開発、8位のソースネクスト<4344>はネット選挙にも必要なセキュリティソフトが主力。地合いが悪いと技術力のある小型株が買われるもので、ストップ高が続出した。

 悪かったセクターが不動産と医薬品。不動産は三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>の大手3社が揃って3ケタ下落し、3銘柄の日経平均寄与度は-14円。東証REIT指数も46.97下落している。医薬品はアステラス製薬<4503>が160円安、塩野義<4507>が137円安、武田<4502>が120円安、大日本住友製薬<4506>が114円安、中外製薬<4519>が83円安で、その5銘柄の日経平均寄与度は-24円。値下がり率ランキングの8位には135円安の田辺三菱製薬<4508>が入っていた。

 この日の主役はシャープ<6753>。売買高1位、売買代金2位と大いに買われ、後場は一時80円高でストップ高になり、終値54円高で年初来高値を更新し値上がり率13位に入った。主力行2行がCB償還財源とは別に1500億円の追加融資に応じたというニュースがあり、サムスン電子との提携強化を読売新聞が報じたが、ストップ高になるほどの好材料とも思えない。「巨額最終赤字三兄弟」でこの日24円安のソニー<6758>の決算発表待ちの間の手なぐさみだろうか。そのソニーの決算は、前期最終利益は430億円と5期ぶりの黒字で晴れてシャープ、パナソニック<6752>と兄弟の縁を切った。営業利益は2301億円の黒字だったが、今期も横ばいの2300億円で、最終利益は500億円と控えめ。想定為替レートを1ドル=90円に抑えて上方修正に含みを持たせ株価を維持するという、トヨタと同じ手を使っている。(編集担当:寺尾淳)