超高齢化社会を迎え、どの製造業やサービス業でも、シニア層のニーズを満たすユニークな商品開発が急務である。大成功に結びつく例もある。日帰り温泉付帯食 事処でのメニューなど、好例であろう。ボリューム半分で、値段を下げ、高齢者層の入店を増やしている。スポーツの分野ではどうか。
退職後はゴルフ三昧、毎週ラウンドで足腰強化、体力維持でいつまでも長生き、そうした夢を持つサラリーマンは身近に数人はいるものだ。しかし、年金生活での予算には大抵制約がある。狭い日本で、ゴルフは安く楽しめるのだろうか。外国のシニアはどうしているのか。こういう夢は外国人でも当然同じで、ゴルフ 天国のオーストラリアでは、大抵どの町にもパブリックコースがあり、コースにもよるが、年会費10万円位で楽しめる。中高年者がプレーを楽しんでいる。とはいえ、オーストラリアのゴルフ場にはキャディーさんがいない。手動のカートを引くプレイヤーが多い。電動カートも5、6台くらいはクラブハウスの脇に並 んでいるのだが、体力維持が第一目的、歩いてラウンドする人が多いのだ。特に平日は空いているので、後ろの組を気にせずに回れるのが良い。とはいえ、シニアプレイヤーが手動カートを自ら引いて18ホールを回れるのだろうか。
オーストラリアのコースは、第9ホール終了後に昼食休憩を挟まず、18ホールをスルーで回るのが原則だ。いくら大柄で体力のあるオージーでも、シニアには きつい。手動カートではなおのこときつい。とはいっても、コースそのものは、第9ホールを終えてクラブハウスの建物に戻ってくる設計になっている。ハーフ を回るだけで帰宅しても、もちろん構わないのである。パー36では物足りないように思えるが、これを自分でパー45や50に変えてしまう方法がある。ドラ イバーを使用しないことによってである。手動カートだから、重量を考えれば、クラブの本数が少ないことに越したことはないのだ。5,6本だけ持ち歩いてい る身軽なプレイヤーも結構いるのである。サンドとパターだけの二刀流にして、いや、二本流にして、個人的にパー60に変更することも可能である。もっと も、最適クラブを選ぶのもプレイの一つで、「弘法筆を選ばず」とはいかないから、四本流くらいまでが現実的か。
もし望めば、パーを72にまで増やす手品もある。何も難しくはない。飛ばないボールを使用するのである。池ぽちゃしても水に浮くような、フローティング ボールが入手できればさらに良いかもしれない。重量が軽く、外径がわずかに大きく、比重が一以下のボールだ。スポーツ用品店ではなかなかお目にかからないが、池に打ち込む関西の打ちっぱなし練習場などで使用されている。大阪人の土地を無駄にしない感覚には感心する。ともかく、これをコースで使えば、なお飛ばないボールなので、前の組がグリーン上にいても、第一打を開始出来る。風の影響が強まるので、何度同じコースを回っても、毎回違う楽しみ方が出来る。規則にも触れない。ゴルフボールの直径は 1.680インチ以上、重さ45.93グラム以下と定められており、大きくて軽いボールはOKなのだ。
日本でも、平日のがらがらに空いている時間帯に予約すれば、そんな楽しみ方ができるかもしれない。もちろん、後ろの組に迷惑にならない範囲で、との条件つきだから、時々だけかもしれない。将来の都市近郊には、比較的安く楽しめる、9ホール/パー72の、フローティングボール専用ゴルフ場ができるかもしれな い。もちろん、孫息子や孫娘と、河川敷や芝生広場で楽しめるのはスナッグゴルフだろう。小さめのテニスボールのような球をプラスチック製のランチャーと ローラーで打つ手軽なスポーツだから、三世代交流、リハビリにも活用されている。大都市圏でも、スナッグゴルフを楽しめるような空間が増えてほしいものだ。
ゴルフに限らず、スポーツでシニア向け商品を開発する余地はまだ見つかるかもしれない。例えば、草野球で使用する軟球だが、年をとるにつれて、仕事場での責任が重くなり、怪我をしないよう自重することがある。暴投や自打球を当てても怪我をしないシニア用ボールなど、市場が存在するかもしれない。ヘディングしても首への負担がほとんどないサッカーボールなども、中年プレイヤーにはありがたい。スポーツ業界のシニア向け商品は一部ジュニア向け商品と重なり、市場規模の維持を見込める数少ない分野でもあるから、今後のラインアップに期待がかかる。(編集担当:轟和耶)