花王、加齢で増加する歯周炎の発症メカニズムは免疫反応も関係

2010年02月25日 11:00

 花王 <4452> のヒューマンヘルスケア研究センターは、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 原宜興教授と共同で、加齢に伴う歯周炎の増加の原因について発症メカニズムからアプローチ。過剰な免疫反応が関係することを見いだしたという。

 歯周病は歯肉炎と歯周炎(歯槽膿漏)の総称で、歯周炎は歯肉や歯槽骨(歯の周囲にあり、歯を支える骨)などの歯を支える土台となる組織が破壊されてしまう病気。歯周炎は成人が歯を失う大きな原因であり、子供や若者の罹患(りかん)率は少ないものの、加齢とともに増加して40歳以上の約半数が歯周炎に罹患しているといわれている。(平成17年歯科疾患実態調査、厚生労働省)

 今回の研究では、口腔内の診査(歯周ポケットの深さ、出血の有無、プラーク量)、唾液中の歯周病関連細菌の量、血液中の歯周病関連細菌の毒素に対する抗体の量について115名を対象に調査を実施。その結果、加齢とともに歯周炎が進行している人の割合が増える傾向を認めたという。また歯周炎が進行している人ほど抗体が多く、さらにプラークが多いことに加え歯周病関連細菌に対する抗体が多い人ほど歯周炎が進行。また歯周病関連細菌の量よりも、その菌に対する抗体の量のほうが歯周炎の進行の程度との関連が強く認められることがわかり、加齢による歯周炎の進行に免疫反応の影響が示唆されている。

 さらに今回の成果として、抗原である細菌の毒素と毒素に対する抗体による免疫反応により実験的に歯周炎を発生させることができる”歯周炎モデル”を新たに確立。このモデルによる検討の結果、あらかじめ抗原により感作させてから抗原を投与し続ける方法や、抗原と抗体を交互に投与する方法で、歯周炎を実験的に発生させることに成功したという。

 以上より、加齢に伴う歯周炎増加の原因のひとつとして、長い年月をかけて人の体内に歯周病関連細菌に対する抗体の量が増えることで抗原を排除しようとする過剰な免疫反応が起こりやすくなり、これにより加齢に伴って歯周炎の罹患率が増加する可能性が考えられる。また歯周炎予防には、歯周炎が進行する歯周ポケットの深い部位における抗原の原因となる細菌の除去に加えて、抗原と抗体に起因する過剰な免疫反応を抑えることが、重要と位置づけられた。このような成果は今後、同社のオーラルヘルスケア商品の開発に応用していくという。
(編集担当:宮園奈美)