NYダウは60ドル高で史上最高値更新。NAHB住宅市場指数が市場予測を上回っても卸売物価指数(PPI)や鉱工業生産指数が低下するなど経済指標がまちまちでも、「QE3の出口はまだ先」と解釈されれば株価は上昇する。16日朝方の為替レートは、ドル円は102円台前半で前日とほぼ同じ水準でも、ユーロ円は131円台後半で円安がやや後退。ただしこれはユーロを売って株価好調のドルを買う動きが活発だったため。取引開始直前に発表された日本の1~3月期のGDP速報値は前期比0.9%増、年率換算で+3.5%で、市場予測の+2.8%を0.7ポイントも上回るポジティブサプライズ。輸出は3.8%増、内需の個人消費もプラスで新車販売も復調。特に住宅投資の1.9%増が目立った。
しかし、前日が300円を超える上昇だったので利益確定売りも入り、日経平均始値は50.02円高の15146.05円と上昇は控えめで、その後はプラスとマイナスを行ったり来たり。利食いと押し目買いがせめぎあう「高値波乱」で、午前11時すぎには15000円の大台も割った。後場は一段安になり14900円もたびたび割り込んで、このまま終わるかと思われた午後2時すぎ、さっそうと登場したのが日銀のETF買い入れ出動、人呼んで「日銀砲」。4月26日以来の188億円の実弾が市場で炸裂し、最後は15000円の大台に乗せて終値は58.79円安の15037.24円だった。TOPIXは-7.62の1245.23。TOPIX前引けが前日比1%を超えるマイナスだったので日銀砲登場は予想できたが、タマを撃ち始めるタイミングが絶妙だった。そんな映画のような出来事を抜きすれば、13日と15日の大商いで大台に乗せた達成感もあり、次の上昇相場入りまで日柄調整でやり過ごすパターンに入った感がある。売買高は51億株、売買代金は4兆835億円でこの日も大商いだった。
東証1部の値上がり銘柄379に対して値下がり銘柄は1290と約4分の3もあり、業種別騰落率のプラスは電気・ガス、精密、ガラス、その他金融、不動産、空運など10業種。マイナスが大きかったのは銀行、小売、海運、サービス、水産・農林、建設などだった。
この日も売買高、売買代金1位は100円高の東京電力<9501>で値上がり率3位。東電ばかりなぜモテる。決算発表明けの三大メガバンクは揃って下落し野村HD<8604>も7円安だったが、保険株は最終利益59%増の前期決算と今期の増配見通しを発表した第一生命<8750>、増益見通しと自社株買いを発表したT&DHD<8795>は年初来高値更新。ノンバンクのアイフル<8515>、オリコ<8585>も揃って急反発し、不動産関連も住友不動産<8830>、三井不動産<8801>、ケネディックス<4321>など値を戻す銘柄が多かった。債券市場が落ち着きを取り戻して長期金利は0.835%まで下落し、東証REIT指数は6日ぶりに上昇していた。
自動車はトヨタ<7203>10円高、マツダ<7261>11円高、三菱自動車<7211>3円安とパッとせず、2015年のF1復帰を正式発表したホンダ<7267>は10円安と売られた。その中でいすゞ<7202>は29円高と好調持続。電機はソニー<6758>10円高、シャープ<6753>24円高でもパナソニック<6752>13円安、東芝<6502>13円安と高安まちまち。ルネサスエレクトロニクス<6723>は49円高で値上がり率7位に入っていた。精密はニコン<7731>が101円高、キヤノン<7751>が35円高、リコー<7752>が44円高と好調だった。
「御三家」はファーストリテイリング<9983>が550円安、ソフトバンク<9984>が140円安と悪く、両銘柄で日経平均を38円押し下げた。ファナック<6954>も90円安。MSCIが5月31日付で標準指数採用銘柄に入れると発表したガンホー<3765>だが7.46%の下落とさえなかった。
この日の主役はオリンパス<7733>。最後はストップ高の500円高で年初来高値を更新し、終値3215円と3年ぶりに3000円台を回復。値上がり率5位に入り日経平均を20円押し上げた。前日に3月期決算を発表し、前期の最終損益は前々期の489億円の赤字から80億円の黒字に。今期はコンパクトデジカメ部門を縮小して収益性を改善し、最終損益は3.7倍の300億円と見込んでいる。中間期の決算発表を延期して株価が424円まで暴落した出来事からもう1年半。ソニー<6758>から500億円の出資を受け、4月にはメディカル部門でソニーとの共同出資会社が発足し、稼ぎ頭の内視鏡を柱に事業再建は順調に進んでいるようだが、株主による集団提訴は裁判所で係属中で、東証では有価証券報告書の虚偽記載問題で京王ズHD<3731>とともに「特設注意市場銘柄」に指定されたまま。内部管理体制確認書で改善が認められ2015年1月20日までに指定を解除されないと上場廃止になる。オリンパス・スキャンダルは、株式市場ではいまだに現在進行形だ。(編集担当:寺尾淳)