【日経平均今週の展望】15000円チャレンジを阻む伏兵は?

2013年05月12日 16:32

 日経平均15000円チャレンジを阻む伏兵は?

 5月第3週(13~17日)は3週ぶりに月曜から金曜まで5日間の取引になる。海外主要市場にも休場日はない。国内主要企業の決算発表は15日までは3ケタの社数が続く。13日は大成建設<1801>、日揮<1963>、日本ハム<2282>、アステラス製薬<4503>、エーザイ<4523>、第一三共<4568>、日本製鋼所<5631>、パイオニア<6773>、シチズンHD<7762>、大日本印刷<7912>、ふくおかFG<8354>、静岡銀行<8355>、スクウェア・エニックス<9684>、14日は大林組<1802>、清水建設<1803>、鹿島<1812>、日本製粉<2001>、日清製粉G<2002>、森永乳業<2264>、明治HD<2269>、グンゼ<3002>、ワコールHD<3591>、電通<4324>、大塚HD<4578>、コスモ石油<5007>、昭和電線HD<5805>、東洋エンジニアリング<6330>、シャープ<6753>、横河電機<6841>、太陽誘電<6976>、いすゞ自動車<7202>、ヤマハ発動機<7272>、アイフル<8515>、住友不動産<8830>、大京<8840>、15日は日本水産<1332>、三井住友建設<1812>、森永製菓<2201>、江崎グリコ<2206>、東洋水産<2875>、王子HD<3861>、日本製紙<3863>、住友化学<4005>、日本軽金属HD<5703>、アマダ<6113>、じもとHD<7161>、サンリオ<8136>、クレディセゾン<8253>、三菱UFJFG<8306>、三井住友FG<8316>、みずほFG<8411>、第一生命<8750>、T&DHD<8795>、東京急行電鉄<9005>、阪急阪神HD<9042>、東映<9605>、16日は日本板硝子<5202>、17日は佐世保重工<7007>が、決算発表を行う予定になっている。それとは別に、14日にはシャープ<6753>が中期経営計画を発表し、16日には日立<6501>が経営方針説明会を開催する。
 
 国内の経済指標は、13日は4月のマネーストックM2、14日は4月の国内企業物価指数、工作機械受注、15日は3月の第三次産業活動指数と4月の消費者態度指数、16日は1~3月の四半期実質GDP速報値、3月の鉱工業生産確報値、4月の首都圏・近畿圏マンション販売、17日は3月の機械受注が、それぞれ発表される。3月の製造業関係の指数が上向くかどうかや、アベノミクスが始まった後の1~3月の実質GDPの伸び率には特に注目したい。
 
 海外の経済指標は、13日は中国の4月の鉱工業生産と小売売上高、アメリカの4月の小売売上高と3月の企業在庫、14日はユーロ圏の3月の鉱工業生産と5月のZEW景況調査、アメリカの4月の輸入物価指数、15日はユーロ圏、ドイツ、フランスの1~3月の四半期GDP速報値、アメリカの5月のNY連銀製造業景気指数、4月の卸売物価指数(PPI)、3月の対米証券投資、4月の鉱工業生産、4月の設備稼働率、5月のNAHB住宅市場指数、16日はユーロ圏の4月の消費者物価指数改定値と3月の貿易収支、アメリカの4月の消費者物価指数(CPI)、4月の住宅着工件数、4月の建設許可件数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数、17日はユーロ圏の3月の建設支出、アメリカの5月のミシガン大学消費者態度指数速報値と4月の景気先行指標総合指数が、それぞれ発表される。アメリカで経済指標の発表が多いが、特に小売関連、住宅関連の指標で景気減速がどれほどなのか確かめたい。16日には小売業のウォルマートの決算発表もある。
 
 今週は日経平均の14000円、NYダウの15000ドル、TOPIXの1200、為替のドル円の100円と、節目の数字が次々とクリアされていった週だった。前週末から913円も上昇した日経平均の次の節目は15000円、そして円、ドルの通貨単位を無視してNYダウと日経平均が同じ数値になるNN倍率=1だろうか。あと393円まで迫った「15000円チャレンジ」は、来週中にクリアできるのではないかと期待が高まっている。まる1ヵ月間しつこく抵抗してきたドル円の100円の壁突破でさらなる円安進行が見込まれ、雇用統計もSQもG7も通過して国内外に大きなイベントが見当たらず、主要企業の決算発表もトヨタ<7203>、ソニー<6758>のような最重要銘柄が今週で終了し、来週は市場インパクトの大きいものはほとんど残っていないというのが、その根拠である。
 
 しかし来週、株価上昇の勢いを止める伏兵が全く存在しないとは言えない。それは「ヘッジファンドの解約期限」「スロベニア」「日柄調整」の3つである。
 
 海外ヘッジファンドの決算期は11月末、12月末が多く、中間期は5月末と6月末になる。解約するには期末、中間期末の45日前(営業日ではなく実日数で計算)に通告するルールがあり、今年は4月15日と来週の5月13日がその期限になる。解約通知を受けるとヘッジファンドは返戻資金を準備するために資産を現金化しなければならず、たとえば日経平均先物で運用していればポジション解消売りが発生することになる。実際、解約でどの程度の売りが発生するかはフタを開けてみないとわからないが、用心するに越したことはない。また、5月は中間期の決算を控えてポジションの巻き戻し(アンワインド)と称してポートフォリオの再構築を行う時期でもあり、そこでも整理売りが発生する。そんなことも、ウォール街の「Sell in May and go away(5月に売って逃げろ)」という言い伝えの根拠になっているのだろう。
 
 来週は13日にユーロ圏財務相会合、14日にEU財務相理事会が開催されるが、ヨーロッパの債務危機の火種はまだ消えていない。議題になる可能性があるのが「スロベニア」問題。日本ではかつてチェコと一緒だったスロバキアと混同されがちでなじみが薄いが、旧ユーゴスラビア連邦の構成国の一つで、ユーゴ内戦とほとんど無縁だったこととイタリアやオーストリアと国境を接する地の利を活かして西欧諸国から投資を呼び込み、一時は「中欧の経済優等生」ともてはやされユーロ圏入りを果たした。この国の経済がいま危機に瀕しており、国債格付けは「投資不適格」にされ、キプロスに続きユーロ圏で金融支援を受ける6カ国目になるのではないかと取り沙汰されている。9日にブラトゥシェク首相が大増税を断行し国有企業15社を売却する経済抜本改革プログラムを発表したが、それでも不十分という指摘があり、EU が評価できないようなら来週、ヨーロッパ発の突風が吹く恐れがある。成長を遂げて経済規模がそれなりに大きいので、債務危機が拡大すれば同じ小国でもキプロスより数倍、始末が悪くなりそうだ。
 
 そして「日柄調整」とは、5年4ヵ月ぶりの14600円台に乗せた今週の上昇幅が913円と少々スピード違反気味で、来週は休みが入る週になりそうなこと。実は4月4日の日銀の「異次元緩和」の翌週から日経平均の週間の騰落は+651円→-168円→+567円→-190円→+913円と、プラスとマイナスが相互に現れており、順番通りなら来週はマイナスの週になる。適当に休みを入れてきたから上昇トレンドがこれだけ長続きしてきたとも言え、日柄調整は相場が「健康」を保つためにも必要なこと。もっとも、下げた週でも下落幅は200円以内ですんでいる。
 
 9日に発表された3月の景気動向指数は一致指数は0.8ポイント上昇、先行指数は0.1ポイント下落した。10日に発表された4月の景気ウォッチャー調査は、好・不況の分かれ目の50は上回っているが現状判断DIは0.8ポイント下落し、先行判断DIは0.3ポイント上昇した。天候にたやすく左右されるなど景気回復は力強さに欠け、アベノミクスはまだまだ期待先行。その期待を一身に背負って走ってきた株式市場にも適当な休息が必要だ。それは日経平均15000円チャレンジの前になるかもしれないし、後になるかもしれない。ということで、来週の日経平均のレンジは14200円~15000円とみる。(編集担当:寺尾淳)