財団法人日本不動産研究所の調べによると、田の価格は10アールあたり90万2781円、畑地52万606円と、前年に比べ、田で3・3%、畑地で3・2%それぞれ下がったことが分かった。田の価格は1992年の119万2792円をピークに1993年から17年連続の下落となっている。
これは、同研究所が全国の市町村1500を選定して、田畑の生産力や耕地条件などを勘案して、田畑を「上の中、普通、下の中」の3ランクに分け、市町村役場や農業委員会等に調査票を送付して回答を得たもので「農地を農地として利用する売買の価格を調査するため、宅地見込み等が織り込まれ、著しく高額な価格のものなどを除いた普通品等の実測10アールあたりの価格を採用している」。
価格の低下について、同研究所では「2008年産農産物価格が比較的安定したことや農地集積の進展などから保合気配の市町村が多かったものの、条件不利な地域を中心に高齢化の進展もあって農地の維持が困難になるケースがみられた。山間部などの条件不利な地域では田の集積が難しいため、買い手がほとんどいない状況になっており、こうした状況が下落傾向を招いた」としている。
農地購入については、農地を既に30アール以上保有していなければ購入できないなど、市町村でそれぞれ条件(壁)があり、都会で働くサラリーマンが定年退職を機に、田舎に家を建て、農地を購入して、第2の人生を年金と農業でゆっくりしたいと希望しても、農地に関係する法的規制が緩和されなければ現実には難しい。
農業希望者が農地を所有していなくても購入できる法整備(規制の見直し)や一定の農地を確保すれば、その内の1割未満を宅地として使用できるよう地目変更を認め、新居を建築できるよう新規に農業参入しやすい環境をつくれば、山間農地の荒廃や山間地の過疎化(人口減少)にも歯止めがかかり、一定の効果が期待できる、と思われる。
農水省では現在、農地の賃貸借を推進し、農業への新規参入者を育成するなど、耕作放棄地を解消する農産業育成の環境づくりを創出することにより「全国に28万4000ヘクタールある耕作放棄地のうち、2011年度には10万ヘクタールを農地利用できる状態に再生したい」(同省農村振興局農地資源課)意向だが、産業レベルで農業をしようという農業者の育成施策と合わせて、都会で定年退職を迎えた人たちも農業に新規参入できるような環境整備も検討すべき時期を迎えているといえよう。
(編集担当:福角忠夫)