日刊紙 1年分購読料前払いなら割引販売OK

2009年06月24日 11:00

 公正取引委員会は日刊紙発行の新聞社が1年間の購読料の前払いなどを条件に購読料を割り引いても、長期購読者を対象にしていることや割引条件、割引幅など総合的に正当かつ合理的な理由が成立すれば独占禁止法上問題にならない、との判断を示し、2008年度の相談事例集にこの事例を紹介した。

 今月、公取事務総局がまとめたもので、それによると、相談された案件では、日刊紙の購読期間を1年間とし、1年分の購読料を一括前払いで支払ってもらう。また支払い手段はクレジットカードで行ってもらうこととし、割引幅は新聞発行の新聞社と新聞販売店に利益が確保できる範囲とする、というもの。この内容で定価の割引を実施した場合、独占禁止法に抵触しないか、どうかの問い合わせを受けたとしている。

 公取では「購読する相手によって定価を割り引いて販売する場合には独占禁止法上、問題だが、正当かつ合理的理由があっての割引についてはこの限りでない。今回の内容を総合的に勘案すれば正当、かつ合理的理由があると考えられる」としている。

 新聞、雑誌など印刷媒体による情報サービス業界はパソコンや携帯などによるインターネットに押され、読者の活字離れの影響もあって、部数の維持、拡張競争が従前以上に激しくなっている。このため、「現在購読中のA社の新聞契約が切れる数年後から、当社の新聞の数年間の定期購読を」と割引を提示して購読を要請するケースもみられ、割引を行ってでも1年間の固定読者を確保したい、という新聞社が表われても当然の状況だ。

 独占禁止法では第19条で事業者の不公正な取引方法を禁じている。そうした中で、新聞については「新聞業特殊指定」があり、日刊紙を発行する業者は直接、間接を問わず、地域や相手方により異なる定価を付けたり、割り引いたりして新聞を販売することは不公正な取引にあたるとされている。ただ、学校教育用教材や大量一括購読者向けである場合、「正当かつ合理的理由がある場合」には例外として、これを認めるとしている。
(情報提供:エコノミックニュース 編集:福角忠夫)