NYダウは116ドル安。日銀の金融政策の現状維持を受けたリスクオフの流れがアジア、ヨーロッパ、アメリカの株式市場を冷やしながら地球を一周した。前日大引け後の記者会見で黒田総裁は、固定金利オペの低利資金の貸出期間を現行の最長1年から2年以上に延ばす案について「議論はあった」としながら「現時点で必要はないとの結論に達した」と述べた。金利高への対策がなかったため為替が敏感に反応し、ドル円は一時95円台まで円高が急進。12日朝方の為替レートはドル円が96円台前半、ユーロ円が128円台前後で、長期金利上昇、円高に加え、海外市場のリスクオフを受けて取引開始前の外資系証券経由売買注文状況観測は株数も金額も売り越しになり、東京市場の大幅な下落は避けられない情勢になった。
日経平均は229.96円安の13087.66円でスタートするが、一時13000円を割り込んでも12994円どまりで値動きはだんだん小さくなる。先物の限月越えのロールオーバーがピークを迎えるので「メジャーSQの週の水曜日は荒れる」と言われるが、乱高下の発作は起きず全く逆の静かな展開。後場の午後1時以降は為替の円安に足並みを揃えた健康的なジリ高に変わり、下げ幅を圧縮して2時23分には瞬間プラスに。終値は28.30円安の13289.32円で、割ると思われた75日移動平均線を上回って引けた。TOPIXは-4.61の1096.54。売買高は29億株。売買代金は2兆2768億円で商いは最近になく細っている。
値下がり銘柄867に対し値上がり銘柄は723もあったが、東証1部33業種で騰落率プラスは電力・ガス、小売、繊維、機械、鉄鋼、倉庫など9業種にとどまった。マイナスはパルプ・紙、不動産、輸送用機器、ゴム、銀行、保険などだった。
長期金利が一時0.9%台まで上昇し、東証REIT指数も下がったので金融・不動産はふるわず、メガバンク3行も、証券大手の野村、大和も、不動産大手の三井、三菱、住友、東急も東京建物<8804>も全てマイナス。アイフル<8515>やケネディクス<4321>、ペプチドリーム<4587>がらみのSBIHD<8473>の上昇が目立った程度だった。一方、電力セクターは円高で燃料コストが下がるという思惑で買われて全面高になり、38円高で値上がり率19位、売買高、売買代金1位の東京電力<9501>をはじめ地域10電力もJパワー<9513>も全てプラスだった。
円高で株価が下がるのは輸出関連。トヨタ<7203>が110円安、ホンダ<7267>が60円安、富士重工<7270>が11円安、マツダ<7261>が9円安、日産<7201>が24円安など自動車は全面安だったが、三菱自動車<7211>は後場買われて2円高に。電機もソニー<6758>が23円安など不振だったが、鉄鋼は新日鐵住金<5401>が1円高、神戸製鋼<5406>が2円高、JFEHD<5411>が15円高と好調。精密機器も後場に上昇し、キヤノン<7751>は50円高、ニコン<7731>は41円高で引けている。
三菱重工<7011>は昼休みにアメリカの原発の廃炉について「現時点で業績への影響はない」というコメントを発表して後場プラスに浮上し6日ぶり反発の19円高。その三菱重工と火力発電事業を統合する契約を結んだ日立<6501>はパワー半導体事業の再編報道が好感され7円高だった。サニックス<4651>はこの日、信用取引の規制が解除されてストップ高の150円高で値上がり率5位に入った。中国のATM事業が好調で、社長が財務改善で今期末の自己資本比率を19%以上に高めるとコメントしたOKI<6703>は円高をはね返して値上がり率15位の14円高になった。パワービルダーの飯田産業<8880>は前日に最終利益が最高益を更新した4月期決算を発表。売上2割、営業利益3割増の通期見通しも好感され75円高だった。
午前10時すぎ、前日にマザーズに上場した話題のペプチドリームに公開価格2500円の3倍以上の7900円の初値がつき、終値は9200円。だが同じ時間帯、「アトラス」のスマホゲームを手がけるジャスダック上場のインデックス<4835>に証券取引等監視委員会が粉飾決算の疑いで強制調査に入ったというニュースが流れ、9時29分に大証は売買停止措置をとる。12時16分に再開したがそのまま400円安のストップ安比例配分。オリンパス<7733>が前日に特設注意市場銘柄指定を解除されたばかりだが、世に上場企業のスキャンダルの種は尽きまじ七里ヶ浜。
この日の主役は「御三家」の一角のファナック<6954>。日経平均の前場の底堅さも、後場の上昇も牽引し、終値は220円高で日経平均に8.809円寄与してプラス寄与度トップになった。ちなみにファーストリテイリング<9983>もソフトバンク<9984>も揃って値動きなしで日経平均への影響度ゼロ。ファナックは中国関連銘柄の筆頭格だが、この日は上海、深セン、香港の3市場とも休場だったので、3円高のコマツ<6301>、8円高の日立建機<6305>ともども、鬼の居ぬ間に洗濯ができただろうか。(編集担当:寺尾淳)