NYダウは9ドル安。S&Pが米国債格付けの見通しを「安定的」に上方修正しても量的緩和の縮小懸念がなおくすぶり小幅安で終えた。11日朝方の為替レートはドル円が一時99円台で98円台後半、ユーロ円が131円近辺で、円安が進んだ。前日の大引け後に発表された5月の景気ウォッチャー調査は、現状判断DIは前月比-0.8の55.7、先行判断DIは-1.6の56.2で、ともに低下。現状判断で特に悪いのは飲食の-6.4と住宅の-2.9。調査時期が25日から月末にかけてなので、23日の暴落ショックや長期金利上昇の影響が出て、足元の街角の景況感は後退したようだ。
日経平均始値は高値引けの急騰明けでもあり9.43円安の13504.77円とクールダウン。下手にマドなど開けられては後が怖い。その後は利益確定売りで13419円まで下げても反転し13500円台を回復しプラス圏に浮上。マイナスでも小安い水準を維持できるところが前週と違う点。そんな日銀会合の結果待ちの様子見ムードは、昼休みの発表で一変する。
資産担保証券などの担保を差し出して銀行が資金供給を受ける「LTRO(長期資金導入オペ)」の導入も、市場の下落時に「日銀砲」のタマを増やす「ETF、J-REITの買入枠拡大」も含め、あれこれ予想された新政策は全く出ず現状維持。市場の期待がことごとく裏切られて発表後に円高が進行し、後場の株式市場は「クロダ裏切り暴落」が懸念された。
だが、前引けから200円程度の下落で始まり、マイナス圏でも13400円台にたびたび乗せる意外な底堅さ。下げても13300円を4円割り込んだだけ。それでも長期金利が0.88%と0.9%手前まで上昇し、13400円台は最後まで維持できず大引けにかけて売り込まれ、終値は196.58円安の13317.62円だった。値上がり銘柄は約27%の473もありTOPIXは-10.82の1101.15と1100台を維持。商いは薄く、売買高は35億株で、売買代金は2兆7149億円と3兆円を割り込んだ。
値上がりセクターはパルプ・紙、建設、保険、証券、銀行の5業種のみ。値下がり幅が大きいセクターは不動産、その他金融、鉄鋼、電気・ガス、倉庫、鉱業などだった。
ファーストリテイリング<9983>が前場から安く、終値は800円安でファナック<6954>とともに日経平均を46円押し下げたが、TOPIXは大手金融株と自動車株が下支えした。三井住友FG<8316>は15円安だったが、みずほ<8411>は2円高、三菱UFJ<8306>は12円高で野村HD<8604>も5円高。自動車関連では株価を一時6000円台に乗せたトヨタ<7203>、富士重工<7270>がともに20円高で続伸した。
新興国に強いダイキン<6367>は175円の大幅高で日経平均寄与度トップになった。ロボットなど新事業立ち上げに人員200人、資金800億円を投じると発表したシャープ<6753>は評価されず14円安。ソフトバンク<9984>は取引時間前、スプリント・ネクステルの買収額を15億ドル上積みすると発表し、「また社債発行か?」と財務悪化を懸念され結局20円安になった。ANAHD<9202>はLCCでのエア・アジアとの合弁を解消する方針と発表して4円安だった。
不動産は軟調で、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>はともに3ケタ安だったが、住宅メーカーの積水ハウス<1928>は54円高、大和ハウス工業<1925>は14円高と堅調。建設株も清水建設<1803>が23円高、鹿島<1812>が11円高と買われていた。
11日からアメリカ・LAでゲームの見本市「E2」が開催されるためかゲーム関連銘柄の動きが活発化。ソニー<6758>はアメリカで399ドルの新型プレイステーション「PS4」をお披露目し43円高。前日はなつかしの「パックマン」で株価を上げたバンダイナムコ<7832>は、この日は人気格闘ゲーム「鉄拳」の最新作を無料配信するとアナウンスしたが8円安。ジャスダックのガンホー<3765>は、大証の信用規制が解除され足かせが外れて大幅に上昇した。
決算がらみでは、注目の東京ドーム<9681>は営業利益が3割増の模様と報じられても19円安。スチール物置の稲葉製作所<3421>は、営業利益3.4倍という日経新聞の観測記事で101円高で値上がり率14位。新卒者向け求人情報サイトの学情<2301>は営業利益62%増が好感され52円高で値上がり率7位、イハラケミカル<4989>は最終利益を9%増に上方修正し減益から増益に変わったのが好感され17円高になった。
注目のバイオベンチャー、ペプチドリーム<4587>が東証マザーズに新規上場したが初値はつかなかった。その株主として買われていたニプロ<8086>は21円安。オリンパス<7733>は東証が上場時並みの審査を行った結果、この日「特設注意市場銘柄」の指定を解除した。その〃出所祝い〃も込めてか115円高になっていた。
この日の主役は「パルプ・紙」セクター。王子HD<3861>、北越紀州製紙<3865>は野村證券がレーティングを引き上げ、それぞれ31円高、19円高になった。王子は値上がり率12位。日本製紙<3863>も99円高で値上がり率15位と買われていた。7円高の大王製紙<3880>は東証から改善報告書を求められる処分を受けたが、オリンパスのような特設注意市場銘柄指定は免れている。(編集担当:寺尾淳)