検察取調べの録音・録画 4月以降本格試行へ

2008年03月27日 11:00

 来年5月までに実施される裁判員裁判で検察官が、被告人の自白調書の任意性について、裁判員に分かりやすく的確に立証するための具体的方策のひとつとして最高検察庁が試行してきた検察取調べの録音・録画について、最高検察庁は、一定の成果と課題が把握できたとして、4月以降、全国の地検本庁や裁判員裁判の対象事件を取り扱う地検支部にも必要な機材を入れ、取調べの録音・録画の本格試行に入る方針を決めた。

 最高検察庁では被疑者が録音・録画されていることを分かっている状態で自白の動機・経過、取調べの状況、自白調書の作成過程など任意性に関する事項について、自由に供述できるようにし、検察官の立証にとって不利な供述がなされても途中で録音・録画を終了するようなことはしない。また、録音・録画の終了前に被疑者に言い足りないことはないかを確認する。DVDは改編が困難となる措置を講じ、一切編集せず、そのまま厳重に保管する。DVDは刑事訴訟法に従って弁護人に開示するなどのもと、平成18年8月から昨年12月末までの殺人、強盗殺人、強姦致傷など170件の事件について、録音、録画を試行してきた。「実際の裁判でも4回にわたって任意性などの立証に用いられた」(最高検察庁)という。

 この試行により、取調べの録音・録画は取調室の状況や取調官の取調べ状況、被疑者の供述状況や表情、声の様子、挙動等が客観的に明らかになること。不適正な取調べがなされなかったかについての問答も機械的に記録されるものであることから裁判員裁判において任意性等が争われた場合に任意性等の存否を判断するのに有効な証拠になること。任意性等の有無を効率的に立証する手段になり得るものと評価できるとの結果が得られたとしている。

 一方で「試行を全国的に数多く実施し裁判例を集積するとともに、任意性に限らず、信用性等を立証するための証拠としてもDVDを使用する方向で試行を重ねることが必要」など、課題も浮かび上がってきた。このため、全国の地検本庁などで取調べの録音・録画を試行していくとしている。