親の所得によって子どもの将来の進学先が決まってしまう。東京大学の調査で、リーマンショック以降ますます子どもの「進学格差」が拡大していることが明らかになった。
東京大学の小林雅之教授らの調査によれば、2006年の時点では、保護者の所得が400万円以下の世帯では国公立大学への進学率が9.1%、1050万円以上の世帯では11.9%。ほとんど差がなかった。
これに対しリーマンショック後初の調査となった昨年は、400万円以下の世帯では国公立大学への進学率が7.4%、1050万円以上の世帯では20.4%。収入が高い世帯ほど授業料の安い国公立大学への進学率も高くなっている。
私立大については、これまでも親の年収が高ければ高いほど進学しやすくなる傾向にあった。だが授業料が比較的安い国公立では、所得格差はそれほど大きくなかった。小林教授によると、東大など都市の国公立では親の所得が高い子どもが多いが、地方では親の所得が比較的低い層も国立大学に行くことができていた。地方で自宅から国公立に通えば、授業料負担はかなり軽くてすむ。つまり国公立全体としては、子どもの教育機会は保証されていたことになる。
ところが今回の調査ではそれがくつがえされ、親の収入が国公立大学への進学にも影響を与え始めたかっこうだ。これにはリーマン・ショック以後、所得の高い世帯でも授業料負担を重く見る向きが強まったのも関係している。所得の高い層の国公立志向が強まり、低い層が入学しにくくなっている。
リクルート進学総研の調査によると、保護者が進路を検討するさいに最も重視する情報は2007年には「入試制度」だったが、2011年には「進学費用(学費・生活費など)」へと変化。多くの保護者は学費をシビアにとらえている。
ほんらい国公立大学は、広く国民に高等教育の機会を提供する場であるはずだ。そこに親の所得による進学格差が生じているとなると、教育の機会平等という前提条件が失われていることになる。もともと日本は家庭の授業料負担が重い。これ以上、進学格差を拡大させないためにも、給付型の奨学金を充実させるなどの対策が急務だろう。(編集担当:北条かや)