子どもの学力を高めるには塾に通わせるのがいいと思われがちだが、あながちそうともいえないようだ。文部科学省により公表された全国の小中学生の通塾率は、平均55.7%。最も高いのは神奈川県で66.3%、次いで奈良県、東京都、兵庫県と、大都市の周辺が上位を占めている(とどラン調べ)。私立校が多い都市部では、進学熱も自然と高まるため通塾率が高いのは当然とも言える。
ところが公立の小中学生を対象とした全国学力テストの順位は、1位が秋田県、2位福井県、次いで石川県、富山県、青森県。日本海側の県が上位を占めており、先に述べた通塾率が高い県はひとつも入っていない。トップの秋田の通塾率はなんと、全国最低の47位。2位の福井は40位だ。3~5位の石川、富山、青森も総じて塾通いをする子どもが少ない。民間の高度な教育サービスを受けにくいこうした地域で、なぜ子どもたちの学力が上がるのか。
これらの地域では早寝早起きや、朝食をとるといった基本的な生活習慣を実施している家庭が多い。さらに民間の塾こそ少ないものの、そのぶん公教育が充実している。文部科学省が早稲田大学に委託した調査研究によれば、秋田や福井では公立の教員が授業力をアップできるよう、教育行政が積極的な支援をおこなっているという。また学校の管理職と教員の協力関係が良く、教員全員が熱心な学習指導に対する理解をもっている。公教育の質が高く、親が学校を信頼しているために塾通いの必要性を感じないのかもしれない。
ちなみに、同地域では給食費の滞納率が低いことも注目すべき点。給食費を滞納する保護者が多い地域では、学力テストの成績がふるわない傾向が強いからだ。
それぞれの地域によって行政の取組みや文化の差があるため、福井と秋田の事例が、他の地域にそのまま当てはまるとは一概には言えない。しかし、塾へ通わずとも子どもの学力を上げられている事実は、非常に興味深く、参考にできる事も少なくない。