かつて10数年程前、日本で小さな会社を経営する英国人と話す機会があった。彼は、911が新型になるたびに乗り換えるというマニアだった。筆者が「すごいですねえ、儲かってますねえ」というと、流暢な日本語で「私はただの中小企業のオヤジですよ」と彼は笑った。そして「ただの中小企業のオヤジが911を買い続ける理由がわかりますか?」筆者に尋ねながら、返事を待たずに彼は言葉を重ねた。「どこにも買収されない、どこも買収しない、2枚のドアしか持たないスポーツカーしかつくらない。ポルシェという会社は私にとって理想の中小企業なのです。そんなわけでいつも尊敬と憧れを持っています。だから、私の会社の経営状態が芳しくない時でも、新型が出れば、かなり無理をしてでも手に入れます。そしてそれが私の新しいパッションとなるのです」。ポルシェ911というクルマは人々にあらゆる感情を呼び起こすものだと思ったものである。
ポルシェ・ジャパンは、ポルシェ911の50周年を祝うべくアニバーサリーエディションの予約を開始した。初代911のワールドプレミアが1963年に行われたことに因んで生産台数を全世界1963台に限定したモデルだ。0?100キロの加速のタイムが4.3秒で、最高速度は298キロ。カップホルダーパネルにはシリアルナンバーが刻印されるという。このモデルは、9月に開催されるフランクフルト国際モーターショーでワールドプレミアが行われる。価格は1712万円。ベース車のカレラSの251万円高となっている。因みに「40周年アニバーサリーエディション」はカレラがベースで362万円高のプライスタグが付けられていた。
2002年、ポルシェは初めて4枚のドアを持つモデル「カイエン」を発表、09年には、初の5ドアサルーン「パナメーラ」を発表。そして、12年夏、ポルシェは、フォルクスワーゲンの完全子会社となった。(編集担当:久保田雄城)