2008年2月1日。フランス最大手の報道機関AFPが配信した電子版の記事に、「脳トレ」についての大変興味深い記述があった。「任天堂の脳トレソフトを開発したカワシマは自身の4人の息子が平日にテレビゲームをするのを禁止した。ゲームを許したのは週末にわずか1時間だけ。しかも、彼らが規則を破ったとき、一度ディスクを破壊したこともある」この記事については、ニンテンドーDS向けソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を監修し、「脳トレブーム」の火付け役といわれる川島隆太教授も、事実だと認めている。
もともと川島教授がゲームソフトの開発に携わったのは、氏がかねてから「テレビゲームが脳を活性化させるのに役立つのではないか」という仮説をもっていたからだそうだが、だからといって、子どもがゲームをすることをことさらに推奨しているわけではないらしい。それどころか、子供のゲーム時間を親がしっかりと管理して制限したほうがいい、とすら考えているそうだ。
川島教授いわく、「子どもの大切な時間をゲームで浪費するのはよくない」そうだ。脳トレブームの火付け役とも思えない言葉だが、川島教授は「脳トレはあくまで一つの手段であって、目的ではない」という意見を、当初から主張している。
ゲームでも塗り絵でも「脳トレ」をすることで本当に脳が活性化するのかどうかは、実際のところ、ハッキリとそれを証明することは困難だ。確かにトレーニング中は、脳をフル回転させているのだから、「活性化している」のは間違いないだろう。しかし、そもそも「脳トレ」本来の目的は、トレーニング中に一時的に脳が活性化することではないはずだ。そのトレーニングを行なうことによって、脳が持続的に変化、ないしは成長する必要がある。
確かに、脳トレゲームなどを持続して行えば、脳の活性化につながり、結果的に成長することもあるかもしれない。しかしながら、それはあくまで仮説でしかない。本当に実証しようとしたら、数十人の被験者にその「脳トレ」を数年、数十年に渡って実践してもらい、脳の変化を証明してもらう必要があるが、そんなことは現実的に考えても不可能だ。
ゲーム上では、あくまで目安として「あなたの脳年齢は○○歳」などと言っているが、その根拠は不明瞭だ。計算が速ければ脳が若いのか、漢字が書けなければ脳が老化しているのかといえば、そうではないはず。ゲームとして割り切って楽しむ分にはいいが、それを鵜呑みにするのは危険だ。
とはいえ、脳は意外と「だまされやすい」という性質も持っている。つまり、「私の脳は若い」「脳が活性化している」と思い込むことで、医薬品のプラシーボ効果のように、本当に変化をもたらす場合もあるという。「脳が若い」と思い込むことで、ものに対する興味やチャレンジ精神も生まれ、それが脳を成長させることに繋がるのだ。そう考えると、数ある脳トレノウハウや脳トレグッズなども、信じて行なうことで、それなりの脳活性効果は期待できるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)