民主党政権下で公務員官舎使用料を最大2倍にすることが決められたが、防衛省や自民党国防部会は「自衛隊官舎家賃までほかの国家公務員官舎同様に扱うべきでない」と強く反発している。財務省と防衛省の綱引きが続きそう。
これは官舎と民間家賃との格差の大きさが公務員優遇批判につながり、格差是正とコスト削減・財源捻出もあって、民主党政権下で来年4月からの引き上げ実施が決められた。ただ、自衛隊については自然災害など緊急時に隊員の基地までへのアクセス時間が課題になり、初動活動に支障が出ないか懸念する声が防衛省を中心にあがっている。
防衛省の調査によると官舎住まいは全隊員の2割近い4万7000人あまり(営内居住者除く)で、家賃の値上げが実施された場合、2万5200人あまりが民間住宅に転居する意向を持っていることがわかった。
転居すると緊急時に基地まで3時間以上かかる隊員が4割になる(現行16%)という。一方、経済効果では官舎の家賃収入17億円あまりが見込めなくなり、住居手当や通勤手当など89億円が必要になるという(防衛省)。
佐藤正久防衛大臣政務官は「官舎家賃が2倍になった場合、入居者の54%が民間住宅に移動するという結果だが、これは全国トータルで、都内調査ではさらに深刻」と指摘。「都内の比較的大きな官舎地区ではほとんどが民間住宅に移動するとしている。首都直下型地震の対応など即応性に大きな支障がある」と危惧する。
佐藤政務官は「自衛隊員の留守家族支援上も(値上げには)反対」とし、「民主党政権時の決定を死守しようとする財務省。守るべきものが違っていないか」と真っ向批判。佐藤政務官は政務官就任時から自衛隊員の官舎家賃の値上げは非常召集に影響が出るなどの懸念を示していた。(編集担当:森高龍二)