企業の発展とワーク・ライフ・バランス

2013年10月19日 20:35

 2007年に内閣府が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を提唱して以来、ワーク・ライフ・バランスなどの言葉をよく耳にするようになった。政府では、仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であるとし、性別や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することが、国の成長を高めるだけでなく、ひいては少子化の改善や持続可能な社会の実現にも資することとなると、官民一体となっての取り組みを進めている。

 企業に対しても、育児休暇や介護休暇などの「休暇・休業制度」の整備や「働く時間の見直し」、また在宅勤務などの「働く場所の見直し」などを求めており、考え方自体は徐々に浸透しつつあるものの、まだまだ実質的には理想とは程遠いのが現状のようだ。

 日本では1986年に男女雇用機会均等法が施行されたのを皮切りに、共働き世帯が増加に転じてきた90年代後半には、広い意味でのワーク・ライフ・バランスは既に存在していた。92年に育児休暇法、99年の育児・介護休暇法(02~05年の改正育児休暇法)などが制定され、時代に合わせて改正されたりもしている。しかしながら、これらのキーとなる女性への雇用や待遇が実際問題として不十分では、ワーク・ライフ・バランスは絵に描いた餅になってしまう。

 安倍晋三首相も、自身が掲げる経済政策「アベノミクス」の成長戦略の一環として、女性の活躍を推進する方針を打ち出しており、全ての上場企業に対し、少なくとも1人は女性の役員を登用するように求めている。また、女性の活躍を積極的に推進する企業に対しては税制の優遇措置も設けると表明している。さらに、去る9月26日に米ニューヨークで開催された国連総会の一般討論演説の席上でも、日本国内で女性の活躍の場を増やす方針を明言するなど、国内外に向けて女性重視の姿勢を強調している。

 ところが、2013年度版の中小企業白書をみても、管理職に就いている女性の平均値は11.2パーセントに留まっており、その数は決して多くはない。その大きな原因は、たとえ制度はあっても、出産や育児に対する企業側の受け入れ態勢が整っていないことが挙げられるのではないだろうか。

 そのような中でも、東京都新宿区に本社を置く住宅メーカーの株式会社アキュラホームでは、社員の出産、育児を経済面で応援するため、「しあわせ一時金」というユニークな制度を行っている。これは、1 人目の出産時に30万円、2 人目は50 万円、3 人目以降は1 人につき100 万円の出産祝い金を支給するものだ。また、09年からは育児をしながら安心して働ける環境づくりを目的に「育児コース転換制度」を導入し、子供が小学校に就学するまでの期間、1日6時間から4時間勤務を選択できる、時給制の短時間勤務社員にコース転換でき、期間終了後は再び正社員に復帰できる制度を設けている。

 また、2011年の商工総合研究所が発表した「中小企業における女性人材の活用」の調査報告にもいくつかの事例が紹介されている。

 三重県津市で専用工作機械の設計・製造などを営む株式会社光機械製製作所では現役の代表者は女性で、大学卒業後、在日米国企業の勤務を経て会議通訳となり、1997 年同社に入社、副社長を経て2001年から社長に就任しているほか、各人の意欲、適性、能力に応じた適正な人員配置を目指しており、事務部門だけでなく、機械設計、製造等の部門にも女性を配属しているという。

 さらに、群馬県桐生市の染色整理業・朝倉染布株式会社では、とくに出産・育児休業、継続雇用に力を入れており、子どもが3 歳になるまでの育児休業制度を整備するだけでなく、職場復帰後は子供が小学校に就学するまで、短時間勤務かフレックスタイム制、もしくは時差出勤のいずれかを選択できるようになっている。さらに毎年1~3名程度が育児休業を取得しているが、人員の補充は行わず、他の部署からの応援で対応しているという。

 これらの会社は男性女性が公平に活躍できる環境が整備され、能力を評価できる制度が設けられているのが大きな特長であり、共通点でもある。

 日本経済が本当にワーク・ライフ・バランスの考えのもとで成長を遂げ、仕事もプライベートも充実させる環境を整えるためには、このような企業の取り組みが手本になるだろう。また、今後は企業自身も発展していくために、ワーク・ライフ・バランスは最も重要なキーワードのひとつになっていくのではないだろうか。(編集担当:石井絢子)