日本企業に在宅勤務は根付くのか

2013年01月09日 13:08

 2011年の夏、3月11日の東日本大震災をきっかけとして盛り上がった節電とワーク・ライフ・バランスブームだが、昨年夏にはほぼ忘れ去られてしまった。多くの企業が在宅勤務やモバイルワークなどを導入したが、一部の大手企業を除いてあまり広がりをみせなかったように思う。冬の節電時には、ワーク・ライフ・バランスが話題に上ることもない。

 NTTデータ経営研究所によると、在宅勤務をはじめとして社内外の好きな場所で働く「テレワーク」制度を整備して実施している企業は震災後から増え始め、2011年夏の時点で全体の約2割。外資系企業が45%に対し、日系企業では13.1%に過ぎない 。日本企業にテレワークが定着しているとはいえない数字である。

 なぜ日本企業は、社員に在宅勤務をさせたがらないのか。日本企業での仕事は基本的に、ジョブ単位でなく人単位。個々人の業務の範囲が明確でなく、誰が何をいつまでにやるかという細かな役割分担がはっきりしていない。上司が部下を評価する基準も「何をしたか」というより「どのようにしたか」。つまり勤務態度が重要となる。このような企業風土のもとでは、社員をオフィスに集めて監視するのが最も効率的だ。

 日本企業で今後テレワークが広まるとすれば、仕事に対する評価が「人単位」から「業務単位」に変わる時だろう。これは必然的に「業績主義」への移行をともなう。オフィスでの勤務態度より、成果物での評価の比重が大きくなるからだ。

 「あいつは付き合いも良いし、よく頑張ってくれているから昇進させよう」ではなく、「Aさんは◯月までにBという仕事をしたからCという評価を下します」ということになる。業務単位の評価がメインになれば、より業績原理が徹底される。

 日本企業が将来的に、より業績主義的な評価制度を導入するならば、在宅勤務やテレワークが広まる可能性はある。ただしそうなれば、従来とは別の新たな競争環境がもたらされるだろう。その時、多くの日本人は初めて「個」として、市場原理の中に出ていくこととなる。