厚生労働省は2013年中に、「企業内保育所」の設置要件を緩和することを決めた。これまで4階以上の建物で避難用の屋外階段を設置するよう定められていた条件を撤廃するという。都心のオフィスビルなどにある企業内保育所をさらに増やすことが目的で、待機児童問題の解消につながることが期待される。
第一生命経済研究所のレポートによると、企業内保育所は現在、全国で約4000施設が運営されている。利用している児童の年齢は0~2歳が約6割を占め、公立の保育園に入りづらい低年齢児の受け皿となっている(経済産業省「事業所内保育施設等実態調査 報告書」平成22年)。
出産後すぐに復帰したい女性たちにとって、自分の会社に子どもを預けることができれば両立の助けとなるだろう。だが利用児童の数を安定して確保することは難しく、既存施設の定員充足率は約6割にとどまっている。
普及に向けて弾みを付けたいところだが、同志社大学の中村艶子氏の調査によると、個々の企業の腰はかなり重いようだ。企業内保育所をもたない企業104社に「設立しない理由」を尋ねたところ、コスト面をあげる会社が7割を占めている(「企業内保育所事例に見るワーク・ライフ・バランス」)。
企業内保育所をもたない理由として 「不公平感」 をあげた企業も10社あった。この不公平感とは、子どもをもつ従業員とそうでない従業員との格差、また外部の保育所を利用する従業員と企業内保育所を利用する従業員との格差だという。
だが不公平感や格差をいうのであれば、正社員と非正規社員との格差も重視すべきではないか。第一生命経済研究所のレポートでは、約半数の施設が利用を「直接雇用者」のみに制限している。
女性の過半数が非正規雇用として働く現在、正社員だけを対象にした企業内保育所だけでは利用者が集まらないのも当然だろう。政府が本気で「女性の活用」をうたうならば、パートやアルバイト従業員に対しても企業内保育所の門戸を開くことが重要ではないだろうか。(編集担当:北条かや)