初売りも活況 百貨店市場で2014年を占う

2014年01月06日 21:45

 2013年、株高とアベノミクスによる景気回復気配により、百貨店市場は実に16年ぶりとなる活況を呈した。年間を通してプラスで推移しているのは、阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング<8242>と三越伊勢丹ホールディングス<3099>。エイチ・ツー・オーリテイリングの方は、12年11月にグランドオープンした阪急うめだ本店が10月時点で60.4パーセントと高い伸びを見せ、また三越伊勢丹ホールディングスの方も伊勢丹新宿本店が11.9パーセント、三越銀座店が10.2パーセント増加するなど、旗艦店が牽引した。また、大阪市阿倍野区に建設中の日本一高いビル「あべのハルカス」低層階にある近鉄百貨店<8244>の本店も、13年9月の時点で約30パーセントの増収。新装開店の効果で来店客数が伸びて売上高を押し上げており、14年3月のグランドオープンに向けて順調な滑り出しを見せている。

 一方、「大丸松坂屋百貨店」や「パルコ」などを傘下に持つ「J.フロント リテイリング」<3086>、高島屋<8233>、そごう・西武では、10月の時点でそれぞれ1~2パーセント前後、前年を下回る結果となってしまった。ところがこちらも、ボーナス支給額の増加や株高の好影響によって、主に旗艦店での高額品販売が伸び、12月の発表では、J.フロントの2013年3~11月期連結決算は経常利益が前年同期比40%増の239億円と3~11月期として過去最高を更新している。また、高島屋の方も、シンガポールの店舗収益が円安効果で拡大した背景や人件費の削減なども含め、同期の連結経常利益が14%増の196億円とする決算発表をしている。

 そんな百貨店市場全体が活況ムードの中、2014年の初売りが行われ、各百貨店とも開店前から長蛇の列ができて賑わった。各百貨店共に今年の初売りは高級品に力を注いでいるが、中でも話題となったものをいくつか紹介しよう。

 前年よりも9パーセント増の3850人が開店前から列を成した日本橋三越本店では、2014年にちなんで2014万円の福袋が売り出された。気になる中身の方は、豪華客船で行く旅行や、同額の別商品ではダイヤモンドのアクセサリーなどが入っているものもあるという。また名古屋栄三越でも、三井ホーム<1868>とのコラボ福袋として、2014万円で購入した延床面積約33坪の新築住宅に「三越商品券100万円分」がついてくる「VARIO」スペシャル福袋を用意。新居のインテリアや家具、家電などを揃えるのにお得で現実的な福袋となっている。さらに、松坂屋上野店では、なんと1億円の福袋を販売。中身は純金製茶釜だという。他にも、Jフロント系列9店舗で売り出した100万円の福袋が好評で、一部のブランド衣料品の福袋が売り切れるなど盛況ぶりをみせた。昨年好調だった阪神百貨店梅田本店でも、恒例の初売りセールが行われ、こちらも約8800人が列を作り、開店時間を15分早めて売出しが開始された。毎年恒例の「阪神タイガースグッズ詰め合わせ福袋」が3000円で限定300個発売されたが、開店約45分で完売したという。

 今年の初売りでは100万円前後の高級福袋も好調だったようだ。また、昨年秋頃からとくに、全般的に高額商品から売れる傾向の売り場が多く、さらに目的や目当ての商品が明確な消費者が目立っている。この好調は果たして景気高揚によるものなのか、それとも消費税増税前の駆け込みなのか。百貨店の売上は、景気のバロメーターのような側面もある。4月以降も落ち込まずに、この伸びを維持し続けてほしいものだ。(編集担当:石井絢子)