2013年末から、抗ウイルス薬のタミフルとラピアクタに耐性を持つタイプのインフルエンザウイルスに感染した患者が札幌市で相次いで見つかったことで、国立感染症研究所が注意を呼びかけている。
厚生労働省の発表した「人口動態統計」及び、国立感染症研究所感染症情報センター月報によると、2012年の日本国内でのインフルエンザによる死亡者数は1274人となっている。しかし、WHOが推奨する統計方法「超過死亡概念」(直接の死因は、肺炎や脳炎、腎不全などインフルエンザ以外のものだが、インフルエンザに罹患したことが原因となって発症・死亡に至ったケースを含める)を適用すれば、1万人規模にまで達するとみられている。これにインフルエンザ以外の風邪の重症率や死亡率を加えると、その数はさらに膨れ上がるだろう。単純に数値で測るようなものではないが、侮ってはいけないことはよく分かる。
風邪やインフルエンザに対抗する一番の策は、罹ってからの対症療法ではなく、罹る前の予防だ。ただし、西洋医学と東洋医学では同じ予防でも、そのアプローチが大きく異なる。西洋医学では、弱体化させた、あるいは不活化させた病原体を体内に投与することで、その病気に対する抵抗力をつけて、発病を予防したり、症状を軽くしたりする予防接種という方法がとられるが、東洋医学では基本的に投薬という形ではなく、食事や生活習慣を見直すことで免疫力を高め、病気に罹り難い身体、罹っても回復しやすい身体をつくることが大前提となる。前者は即効性はあるものの、病気やウイルスに対して限定的であるため、同じインフルエンザでもタイプが違えば効かない場合もある。一方後者は、即効性は乏しいものの、病気やウイルスを特定しない。
とはいえ、東洋の予防医学は即効性に乏しい分、実感しにくい面もある。「注射を打ったら数時間で熱が下がった」といった類のものではないから、「何となく、身体の調子がいい」「病気になることが少なくなったような気がする」と、どこかに推測を含んだ反応になる。にんにく製品や青汁などの健康食品も、実際の効果や科学的な根拠よりも、イメージや口コミ、宣伝手法などが認知度を高め、利用者が多いのではないだろうか。
ところが先日、ハチミツ産品の製造販売で知られる山田養蜂場が興味深い研究報告を発表して話題になっている。酵素分解ローヤルゼリーを継続的に飲用することによって、免疫力が高まる効果を科学的に確認したというのだ。同社では、唾液に含まれる免疫物質IgAの分泌について、IgAが比較的低めの被験者10名を対象に、1日あたり生換算7,200ミリグラムの酵素分解ローヤルゼリーを4週間飲用させ、その増減を測定した。その結果、唾液中のIgAが飲用4週間で有意に増加していることが分かったことから、酵素分解ローヤルゼリーを継続的に服用することで、ウイルスなどの感染に対する粘膜のバリアが強化され、風邪やインフルエンザの感染予防に役立つ可能性を確認したという。
栄養価の高いローヤルゼリーが健康維持につながるということは広く知られているし、その有効性に関する研究もこれまで数多く行われてきた。実際に、ローヤルゼリーを飲んでいる利用者の中でも「風邪を引きにくくなった」という声も多く寄せられていたようだが、風邪などに対する免疫力に関する科学的な検証は、これまであまり行われてこなかったという。今回、この研究によって、初めてその効果が科学的に立証されたことになる。
風邪やインフルエンザで重篤な症状や死に至ることもあると、知識では知っていても、どこか他人事や、遠い世界の話の様に感じている人も多いのではないだろうか。これから3月にかけて、インフルエンザのピーク時期を迎える。罹ってから対処を考えるよりも、罹る前の予防を心掛けたいものだ。(編集担当:藤原伊織)