【医薬品業界 2013年の振り返り】 再生医療、後発医薬品、鳥インフルエンザ、ネット販売解禁など話題は豊富だったが

2014年01月05日 16:14

 2013年の医薬品業界は、前年に京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞した「iPS細胞」に代表される「再生医療」をはじめ、「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」「鳥インフルエンザ」「医薬品のネット販売解禁」など、経済ニュースにも豊富な話題を提供した1年だった。

 厚生労働省がiPS細胞の臨床研究計画を初めて承認したのは6月で、理化学研究所などが申請した「加齢黄斑変性」という目の難病が対象。京都大学と共同でiPS細胞の研究を行う新日本科学<2395>やテラ<2191>、ナノキャリア<4974>、タカラバイオ<4571>、アイロムHD<2372>、ペプチドリーム<4587>、リプロセル<4978>、セルシード<7776>、コスモバイオ<3386>、J-TEC<7774>、プレシジョン・システム・サイエンス<7707>など、iPS細胞、再生医療に関係のあるバイオ関連銘柄は株式市場で日常的に注目を集めていた。

 大手製薬会社でiPS細胞に最もコミットしていたのが日本網膜研究所(現・ヘリオス)に資本参加した大日本住友製薬<4506>で、10月にはiPS細胞を使った目の難病の再生医療に参入すると発表した。大衆薬メーカーのロート製薬<4527>まで5月に再生医療分野に本格進出すると発表。中外製薬<4519>はiPS細胞で副作用を見きわめて新薬候補の選別をすると報じられた。

 後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、90年代後半に販売が始まった大型医薬品が2010年頃に次々と特許切れになった「2010年問題」を経て、今や再生医療と並ぶ医薬品セクターの最注目分野。沢井製薬<4555>、日医工<4541>、東和薬品<4553>などの後発医薬品メーカーは、株式市場では武田薬品<4502>、アステラス製薬<4503>、第一三共<4568>のような大手と肩を並べるほどの人気。政府も医療費削減のために医療機関で安価な後発薬の普及を後押ししようと新たな「後発薬普及ロードマップ」の策定を進めている。シェアを奪われる前に先手を打とうと、大手の武田薬品も後発医薬品に本格参入した。

 「鳥インフルエンザ」で業績を大きく伸ばしたのが、抗ウイルス消毒剤「クレベリン」が医療機関だけでなく一般家庭でも普及した大幸薬品<4574>だった。インフルエンザ治療薬と言えばロシュの「タミフル」(中外製薬発売)、グラクソ・スミスクラインの「リレンザ」、第一三共の「イナビル」がよく知られるが、富士フイルムHD<4901>の子会社の富山化学が開発した「T-705(ファビピラビル)」も厚生労働省の製造販売承認を2年半も待っている状況で、インフルエンザの話題が出るたびに富士フイルムHDの株価が反応していた。

 一般用医薬品(大衆薬)のネット販売解禁も2013年の大きなニュースだった。楽天<4755>の三木谷浩史社長が旗を振って話題を呼んだが、6月に政府は解禁する方向を示し、11月6日に販売のルール、解禁対象から除外する医薬品などの具体的な方針を発表した。除外は28品目で99.8%を解禁するがそれでも三木谷氏は不満をあらわにしている。同じ月には医薬品ネット通販のケンコーコム<3325>が、処方せん薬の通販を禁止した厚生労働省令は違憲だとして国に確認を求める訴訟を東京地裁に提訴した。

 再生医療安全性確保法とその承認手続きを簡素化する改正薬事法は11月20日、一般用医薬品のネット販売解禁を織り込んだ改正薬事・薬剤師法は12月5日に臨時国会で可決・成立し、2014年4月に施行される。(編集担当:寺尾淳)