がん細胞攻撃する免疫療法薬 初の医療保険対象

2014年02月23日 15:06

 これまでにないタイプの新しいがんの治療薬が年内に販売される予定だ。厚生労働省は昨年末に小野薬品工業<4528>からの医薬品「ニボルマブ」の承認の申請を受けており、年内に申請する見通し。

 これまでの研究により、がん細胞は、リンパ球がもつ免疫作用を抑制するシステムを利用することで、免疫からの攻撃を免れて体内で増殖していくことが分かっていたが、ニボルマブはこのシステムに関与し、免疫の抑制を解除させることで免疫機能にがん細胞を認識させ排除させる反応を増強させる、免疫抑制解除という役割を体内で果たす。これまでにない発想に基づいているため、今後がんの有効な治療法になるのではないかと期待されている。

 今回、ニボルマブは皮膚がんの一つである悪性黒色腫の治療薬として製造販売承認を申請されている。悪性黒色腫は悪性度が非常に高いがん。年齢別にみた悪性黒色腫の死亡率は、男性で60歳代、女性では70歳代から増加。発生部位は足の裏が最も多く、体幹や顔面、爪に出ることもある。これまで、国内においては、外科手術で切除不能な場合の予後は「極めて悪い」とされており、予後を有意に改善する薬物療法もなかった。

 各方面からの注目も高い。フィスコ<3807>は、昨年度の申請を鑑み「来年初から、抗癌剤nivolumabのポジティブなニュースが続くとみており、申請や認可の局面ではバリュエーションが急拡大しやすいとの見方」とコメントしている(12月19日)。世界五大医学誌と言われるうちの一つ、『New England Journal of Medicine』も取り上げており、ニボルマブと別のもう一剤を同時に投与することで、大多数の患者で迅速かつ大幅な腫瘍縮小がみられたとする論文を掲載している。

 これまでの抗がん剤は、ある種の毒性を利用して疾患の原因となっている微生物やがん細胞の増殖を阻害することを目的としていたため、嘔吐や脱毛といった強力な副作用を生じることが問題視されていた。自己免疫を強化させることでがん細胞と戦わせる免疫療法薬は副作用の心配が少ない反面、これまで保険対象とならず、高額な自費となる点がネックであった。ニボルマブは、認可されれば公的な医療保険が使える初の免疫療法薬となる。がん患者にとって有効な選択肢の一つとなることを期待したい。(編集担当:堺不二子)