睡眠不足だけでなく、眠りすぎもまたうつ病発症のリスクを押し上げるという研究結果が睡眠に関する学会誌『sleep』に掲載された。
研究は、およそ1700人の成人の双子を対象とし、それぞれの睡眠時間とうつ症状の有無を比較したもの。7時間から9時間の「通常」の睡眠をとったグループがうつ症状の影響をうけるのが27%だったのに対し、5時間以下の睡眠の人は53%、10時間以上の人は49%という結果になった。眠りすぎ、いわゆる過睡眠の人は通常の睡眠グループよりも2倍弱、うつ症状を呈しやすいということが示唆された形となった。米ワシントン大学医学睡眠センター准教授のNathaniel Watson氏は、「睡眠時間の過不足は、うつ症状に関連する遺伝子の活性化を引き起こす」とコメントしている。
過睡眠はうつ病だけでなく、死亡リスクにも直接関与している。北海道大学医学研究科玉越暁子教授が行った日本人における睡眠時間と死亡に関する研究によると、7時間より長い睡眠時間は、男女いずれにおいても死亡リスクを押し上げているとのこと。
玉越教授によれば、睡眠時間が長くなっても短くなっても死亡しやすくなるという結果は、アメリカの研究でも報告されているという。これに関して、「もしかすると本人も気づいていない病気が潜んでいて、そのために睡眠時間が長くなり、また死亡しやすくなっているのかもしれません。」とコメントしており、睡眠時間が長くなると死亡しやすくなるという結果は得られているものの、なぜ死亡しやすくなるのかは明らかになっていないとし、今後生物学的なメカニズムに迫る動物実験などが必要とまとめている。
一般的に、睡眠不足は健康を害するイメージが定着しているが、過剰な睡眠もまた健康障害を引き起こす可能性があることを示唆する結果となった。忙しい平日の疲れを癒やすべく、休日はゆっくり「寝溜め」している人もいるかもしれないが、もしかしたらそれは逆効果の可能性もある。いずれにせよ適切な睡眠時間を確保したいものである。(編集担当:堺不二子)