自動車や産業機器の省エネはこうやって創られる。電子部品の不思議

2014年03月30日 20:20

抵抗器

ローム株式会社が新たにラインアップに加えた超低抵抗シャント抵抗器「PSR」シリーズ。車載、産機向けの電流検出に最適な超低抵抗で5W相当の定格電力を実現する。

 電子機器に求めるものは人それぞれだが、どんな分野や用途に用いられるものにも共通して重要視されることが大きく4つ挙げられる。一つは省エネ。そしてハイパワー。その上でより小型であること、さらには高い信頼性のおける商品であることだ。しかし、よくよく考えてみると、小型で省エネな製品に、ハイパワーを求めるのは矛盾しているようにも思う。この矛盾した市場の要求を実現させているのが、開発メーカーや部品メーカーの豊富な経験と高度な技術力だ。

 限られた電力を最大限に活かすためには、少しでも無駄を省いて機器を効率よく駆動させるしかない。近年、高機能化や電子化が進む車載機器や産業機器分野では、使用電力が増大するため、より高電力対応の電子部品求められている。その中でも重要な役割を担うのが「抵抗器」と呼ばれる部品だ。抵抗器は電気の流れを制限することで電気回路をスムーズに動作させるための部品で、電気回路に欠かせないもののひとつである。

 抵抗器には、電気の流れに妨げをつくることで、それぞれの回路に最適な電流を流すための調節の役割と、元の電圧よりも小さい電圧に分ける役割がある。抵抗値が低いと電流が多く流れ、逆に抵抗値が高いと電流の流れる量は少なくなり、その余分は熱となり損失となる。つまり、回路の消費電力を抑えるためには、抵抗器の超低抵抗化が重要なポイントになるわけだ。

 この抵抗器の開発においてもやはり、日本企業が世界的にも信頼が厚く、高い評価を受けている。例えばローム<6963>が2014年3月25日にも、独自の精密溶接技術により、車載や産業機器など高電力が必要なセットの電流検出用途に最適な高電力・超低抵抗を実現したシャント抵抗器「PSRシリーズ」を新たにラインナップに加えたばかりだ。同製品は、5Wまで対応可能で、温度計数が優れており、車載や産業機器分野など厳しい温度保証が要求されるセットの回路にも余裕を持って使用することができるため、設計負荷の軽減にもつながるという。これまで高電力分野は海外メーカーが中心だったこともあり、日本メーカーの参入は業界関係者を中心に大きな関心を集めている。

 電気回路の中に含まれている部品、とくに車載機器や産業機器のものは一般の人々の目に触れることは皆無だ。しかし、そんな小さな部品の一つ一つの信頼が、完成された製品全体の信頼に繋がっているのだ。(編集担当:藤原伊織)