スマートフォンやタブレットの人気に触発されて、ノートPCの薄型・軽量化も加速している。薄型・軽量化されることで、よりスタイリッシュで手軽に持ち運べるモバイルへと進化を遂げているものの、それに伴って本体に複数の外部接続端子が設置できなくなってきているという課題もあり、集約型インターフェイスの早急な開発が求められている。
中でも注目されているのが、USBの新規格として話題になっている「USB Power Delivery」(以下、USB-PD)だ。USB-PDは「USB 3.0 Promoter Group」が2012年7月に策定完了を発表したUSBの拡張規格で、その特長はデータを送受信しつつ最大100Wの電力を供給できることにある。現行のUSB2.0規格での給電能力は5Vで最大500mA、USB3.0規格でも5Vで最大900mAとなっており、データを送受信しつつ供給できる電力は最大でも4.5W程度しかない。その為、これまでUSBを用いた給電対象としては、小型周辺機器の充電や駆動などに限られていた。
ところがUSB-PDが実用化されればデータの送受信をしながらでも、最大で100Wまでの給電が可能になる。100Wといえば、デスクトップPCや40型の大型ディスプレイも駆動させることができる電力。当然、ノートPC程度なら余裕で給電できるうえ、余った電力で他の周辺機器も動かせる。もちろん、スマホやタブレットの急速充電も可能だ。つまり、民生機を通常使用の範囲で利用するのであれば充分な給電能力というわけだ。
ちなみに、電圧は5V、12V、20Vの3種類から、電流も1.5A、2A、3A、5Aの4種類から選択することができ、これらを組み合わせることによって10W、18W、36W、60W、100Wと5段階のプロファイルが設けられるという。
日本の電子部品メーカーでは現在、ローム株式会社をはじめ、ルネサス エレクトロニクス株式会社他数社がこの新規格の製品開発に取り組んでいる。昨年開催されたCEATEC2013でもロームやアルプス電気株式会社、ミツミ電機株式会社が開発中のUSB-PDのデモを公開して話題になっていたが、その中でもロームの製品はIntelが主催するIDF(Intel Developer Forum)でも紹介されるなど、実用化に向けて業界でも一歩リードしているとみられている。また、USBの規格化団体「USB-IF」によると、USB-PDのコンプライアンス試験の仕様は2014年第2四半期までに決定され、今年中にはUSB-PD用のコントローラーICも実用化が見込まれており、これの製品化にもロームがいち早く取り組んでいる。
さらに、現行のUSB3.0の約2倍ものデータ伝送速度を誇る最大10ギガビットのデータ通信で4K映像の非圧縮伝送も期待される「USB3.1」や、そのUSB3.1やUSB-PDをスマホやタブレットなどの端末に拡大するための新しいコネクタ「Type C」なども、早ければ2014年中にも登場すると見られており、インターフェイスの機能集約化はUSBで落ち着きそうだ。(編集担当:藤原伊織)