3度目の挑戦、セブン&アイのPBプレミアムビール。サントリーと共同開発『金のビール』

2014年04月08日 10:06

Seven_Suntory_Beer

セブン&アイとサントリーが共同開発したプレミアムビール「セブンゴールド 金のビール」350ml缶:212円(税込:228円)だ。

 セブン&アイ・ホールディングスがビールメーカー、サッポロと組んで開発したプライベートブランド(PB)ビール「100%MALT」がセブン&アイ・グループの店頭に並んだのは2012年11月27日ことだった。

 ビール系飲料のうちブランドの指名買いが多いビールは、小売業社のロゴがつくPB商品は前例がなかった「聖域」だった。ビール系飲料市場縮小のなか、安定的に売れる商品を確立するために、サッポロはその一線を越える決断を下した。同社が下した決断は、その後、業界に大きく波及していくことになる。

 セブン&アイが「セブンプレミアムのPBビール製造・販売」をサッポロに提案したのは2011年の春だったという。サッポロ社内では侃侃諤諤とした議論が続き結論は越年した。

 当時、「重い決断であることは確かだが、他の大手3メーカーと同じ土俵で戦っても現状で勝ち目がない」とサッポロビール営業本部・岩崎智史営業企画部長が、初めてPBビールの製造に踏み切った理由を語っていた。そして翌2012年。寺坂史明社長が結論を下した。

 2010年と翌11年にサントリーが冬限定ビールを投入した際にも「セブン&アイのマークが無いことを条件」に製品化した。ビール業界の自社ブランドへのこだわりは強い。

 しかしながら、サッポロが専売商品でなくPBへシフトしたのはなぜか。日本のビール系飲料市場が緩やかに下降するなか、サントリー・ビール事業に単体で抜かれ、業界4位に転落したサッポロが、長期的に安定販売できる「定番商品」を作りたいとの危機感もあった。

 目指した「新定番」は、季節限定などの専売商品を超えた幅広い層に売り続けられる新商品だ。専売商品より小売り現場と緊密に取り組めるPBビールでなら、安定的に売り場のフェイスを占有できるとの読みも……。

 セブン&アイとの協議のなかでターゲットを消費者に訴求しやすいアサヒ「スーパードライ」にフォーカスした。スッキリした飲み口で苦みは抑える。サッポロの独自技術「氷点下熟成」を採用したのは言うまでもない。しかし、このPBビール「100%MALT」は店頭からフェイドアウトする結果となった。

 だが、しかしセブン&アイとしてはPBビールを何としてもモノにしたかった。2013年6月にPB商品の高品質カテゴリー「セブンゴールド」として、サントリー酒類と共同開発したプレミアムビールを発売した。

 プレミアムビールで伸長しているサントリーにとっても「圧倒的な店舗数で、スケールメリットがある」としてセブン&アイ・マークの付いたPBを決断したわけだ。

 昨年発売時のリリースでは、「セブン&アイとサントリーが、原材料を厳選し、製法にこだわり共同開発した商品です。贅沢に使用した麦芽由来の“濃密な旨み”と、高濃度炭酸による“力強いキレ”を両立しました。素材・製法・容器にこだわった“本格的な上質ビール”でありながら、多くのお客様が日常的にお飲みいただけるよう、お求めやすい価格を実現いたしました」と高らかに宣言したが、結果は……。

 そこで、今回の「セブンゴールド 金のビール」である。「セブン&アイとサントリーが徹底的に“コク”を追求し共同開発した商品です。国産ゴールデン麦芽を一部含む、厳選された4種の麦芽をサントリー最大量使用し、豊かなコクと複雑で深みのある旨みを実現しました。パッケージは、鮮やかなゴールドとブラックを基調に、麦穂のデザインを配することで、上質な味わいを表現しました」とリリースした新製品である。

 発売は4月22日。全国のセブン・イレブン、イトーヨーカドーなどのセブン&アイ・ホールディングス各社の酒類取扱店舗約1万6800店で取り扱う。もちろん、セブン&アイ・マークの付いたPBビールである。アルコール度数はやや高めの6.5%、価格は350ml缶:212円(税込:228円)、500ml缶:274円(税込:295円)。果たして、今回の新製品PBビールの先行きは──?(編集担当:吉田恒)