「若者のビール離れ」と言われて久しい。事実、ビールの出荷量は1995年をピークに減り続けているが、その原因のすべてを若者だけに押し付けるのは間違いというものである。
本当の原因はスーパーの棚を見れば一目瞭然。第三のビール、カクテル、缶チューハイ、焼酎と選択肢が増え、今や「とりあえずビール」の時代ではないのだ。しかし、酒造メーカーとしてはなんとか看板になるような主力商品が欲しいというのも本音だろう。
そこで各社が開発にしのぎを削っているのがアルコール度数の高い缶チューハイ。アサヒビール<2502>が消費税増税後の五月に発売する辛口焼酎ハイボールは、350mlで希望小売価格が141円。同じメーカーの第三のビール、クリアアサヒと小売価格は同じですが、アルコール度数は3度も高い8度。さらに、缶チューハイというと、甘口のものが以前は多かったのだが、この辛口焼酎ハイボールは、食中酒のイメージを強めるために辛口のイメージが強い、焼酎を用いたとか。
また、キリンビール<2503>も主力の缶チューハイ「氷結ストロング」のアルコール度数を8度から9度にアップ。売上高8%高を目指すとしている。さらに、サントリー酒類の「マイナス196℃ストロングゼロ」シリーズは昨年、販売量が前年比で22%増。アルコール度数が8度と高いため、ターゲットは中高年の男性だったが、最近は女性の購入者が増えているという。ではなぜ、高アルコール度数のチューハイの開発に各社がしのぎを削ったり、売り上げが伸びたりしているのだろうか。それは、増税による節約志向と割安感。消費者は今「より少ない量で手軽に酔えるお酒」を求めているということだろう。
時代の流れとはいえ、ちょっと世知辛いものを感じるのは筆者だけではないだろう。「酒くらい、好きに飲ませてくれよ」という世の酒好きの切ない叫びが聞こえるようだ。さて、このアルコール度数の高い缶チューハイ。かつての焼酎のようなブームを作り出せるのだろうか。増税後の売れ行きに注目したい。(編集担当:久保田雄城)