現在、ビール、発泡酒、新ジャンルのアルコール飲料は、国内の他のアルコール飲料と比べて、極めて高い酒税が課せられているのはご存知だろうか。どれだけ高いかというと、小売価格に占める税金は、ビール大瓶1本(633ml)だと約半分となり、発泡酒は3缶(350ml/1缶)飲んだとしたら、そのうち1缶は税金だ。安くて庶民の味方と言われている新ジャンル商品ですら、4缶(350ml/1缶)飲んだら、1缶は税金というから驚くばかり。
4月から段階的に実施される増税では、さらにこの税負担額は増える。酒税に10%の消費税を加えて計算した場合、ビール大瓶1本の小売価格のうち、47.6%(現在45.1%)が税金なのだ。発泡酒は37.3%(現在34.3%)、新ジャンルは28.3%(現在24.9%)にまで増加するから、ビール党にはたまったものではない。
平成23年のビール、発泡酒、新ジャンル商品のトータル市場は、平成6年のピーク時よりも3/4まで縮小しているが、これだけ高い酒税が課されているのだから、市場が萎むのは無理もない。あまりにも高いビールの酒税に対抗するべく誕生した発泡酒ですら、割安感がなくなり、さらには新ジャンル商品ですら伸び悩んでいるのが現状だ。
■ドイツの17倍、アメリカの10倍もの酒税負担
日本の酒税総額の約7割はビール、発泡酒、新ジャンル商品で占められている。簡単に諸外国と比較はできないが、国税に占める酒税の割合も、日本が3%なのに対し、ドイツ0.7%、アメリカ0.8%と、日本が高いのがわかる。さらにその中で、ビール大瓶1本あたりに占める酒税負担額で比較すると、日本の139円に対して、ドイツは8円(日本の1/17)、アメリカ14円(1/10)、フランス29円(1/5)と極めて高いものになっている。
平成元年に導入された消費税の際、酒税改正で清酒やウイスキーは大幅な減税となったものの、ビールはわずかな減税にとどまった。その後、平成9年の消費税引き上げの時にも、ウイスキーは減税されたが、ビールは据え置かれているのだ。
ビール、発泡酒、新ジャンル商品に高い税率が課されていることに対して、サッポロビール<2501>、サントリー<2587>、アサヒビール<2502>、キリンビール<2503>、オリオンビールの5社が「発泡酒の税制を考える会」を設立させている。そこではビール、発泡酒の減税と、平成18年に増税された新ジャンル商品の酒税据え置きを要望しているが、取りやすいところから取るという、税金徴収に対する方針は残念ながら変わっていない。
■ハイボールブーム継続中だが、ビール1杯200円の店も
近年では若者のビール離れが顕著になり、それに代わるようにハイボールがブームになり、ウイスキーが復活するなど、アルコール飲料の流行りは時代と共に変化してきている。ところがビールの酒税は相変わらず高いものの、長らく続いたデフレや企業努力のおかげか、都内の飲食店や居酒屋で、中ジョッキを200円で提供する店舗もチラホラ見かける。家飲みでは、コンビニやスーパーで発泡酒や新ジャンル商品を購入し、外飲みでは「とりあえずビール!」と言ってしまう流れも当分続きそうだ。(編集担当:鈴木博之)