がん検診受診率向上につながるか? わずかな血液で大腸がんを発見 国立がん研究センター

2014年04月12日 22:48

 世界で見ても我が国のがん検診受診率が極めて低いことが問題視されている。早期発見によって治療することが可能といわれているのに、どうして日本人はがん検診を受けないのだろうか。1つには検診に関する周知が不十分であることと、さらには検診に対する恐怖が病気への不安を上回ることも考えられる。こうした恐怖心をやわらげる新たな診断方法を国立がん研究センターが開発した。開発されたのはわずかな血液で大腸がんを発見することができる画期的な方法だ。

 大腸がんは、国内において胃がんに次いで2番目に罹患者数の多いがんで知られているが、2015年には胃がんを抜いて罹患者数が最も多くなることが予測されている。研究の共同著者である国立がん研究センター中央病院消化管内視鏡科中島健氏によれば、大腸がんの検診方法である便潜血検査法は、集団を対象とする検診方法としては費用対効果が高いが、感度・特異度とも十分ではないという。一方で、精密検査である大腸内視鏡検査は、前処置が必要なことや検査に対する恐怖心などから、便潜血検査にて陽性となって要精密検査となっても受診率は6割と低く、実際に陽性者の中での陽性的中率は5%前後にとどまっている。

 そのため「大腸がんにおいては、高い精度でかつ集団検診でも利用できる効率的な検診方法の開発が急務で、今回の方法が大腸がん検診として臨床応用が可能であれば、患者、医療者ともに負担軽減につながり、社会的な意義が大変高い」と説明する。

 こうした背景を受けてがん研究センターでは、血液中に存在するエクソソームを診断に活用し、早期であっても簡便に診断が可能な画期的方法の開発に成功した。

 エクソソームとは、様々な細胞から分泌される微小な小胞で、血液や尿など体液中に存在している。今回開発した方法は、がん細胞に特異的なタンパク質や小さな核酸(マイクロRNA)を含むこのエクソソームを利用したもので、従来法では1日かかるエクソソームの検出を、およそ1.5~3時間で検出することができ、また検出に必要な血液(血清)の量もわずか5マイクロリットルという簡便な方法で実現した。

 エクソソームは採血や検尿など体への負担の少ない方法で診断が可能であり、またがん患者の体液中に存在するがん特異的なエクソソームは様々な情報が詰まった物質であることが知られているため、病態の把握や治療評価への利用も考えられる。しかし、従来法ではエクソソームを体液中から検出し、診断に用いるには多くの手間と時間を要し、これまで実用化には至っていない。

 研究では、短時間で多検体の処理を可能にし、微量の血液からがん特異的なエクソソームを検出する方法を考案、大腸がんの診断で、数年後の実用化を目指し開発を進めている。今回開発した方法により、大腸がんのみならず、早期診断の難しいすい臓がんや、さらにはがん以外の疾患に対する新たな診断が期待できるという。採血や検尿などによって検査が可能であり、将来的には集団検診への利用を推進する計画だ。(編集担当:横井楓)