長寿は日本食のおかげだった 東北大が有効性を解明

2014年04月12日 21:05

 世界一の長寿大国と呼ばれる日本。厚生労働省が2013年に発表した「平成22年都道府県別生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性79.59歳、女性86.35歳と長寿である。この長寿の要因は伝統的な日本食にあった。

 これは、東北大学大学院農学研究科食品化学分野の都築毅准教授らのグループが解明したもの。同グループは、現在の日本食と過去の日本食の比較試験により1975年頃の日本食は長寿や健康維持に有効であることを見出したという。

 従来より日本人の長寿は、「日本食」の高い健康有益性がその理由の一つと考えられてきた。以前、同研究グループは、現代と過去の日本食をマウスに摂取させ、最も健康有益性の高い日本食の同定を試みた。その結果、1975年頃の日本食は内臓脂肪の蓄積を抑制し、加齢に伴う脂質代謝調節機能の低下を抑制し、高い健康有益性を持つことを明らかにした。

 そして今回、日本食がマウスの寿命や脳の学習記憶能に与える影響を検討し、現代の日本食に比べて75年頃の日本食は長寿に有効であることを認め、加えて学習記憶能の維持にも有効であることを見出した。

 具体的な研究内容は、管理栄養士の指導の下、日本国民・栄養調査に基づき 2005年(現代)、1990年、1975年、1960 年それぞれ1週間21食分の日本食の献立を再現し、調理したものを凍結乾燥・粉末化した。作製した各年代の日本食をそれぞれ通常飼育食(CE-2:日本クレア)に混合して30%日本食混合物とし、老化促進モデルであるSAMP8 マウス(4週齢、雄性)に自由摂食させ、寿命まで飼育した。

 飼育中に外見の老化評価(グレーディングテスト)や学習記憶試験である受動的回避試験(パッシブアボイダンス)を行い老化の進行を調べた。また、死亡したマウスは直ちに解剖し、死因を調べた。其の結果、75年と90年の日本食を摂取したマウスの平均寿命は、2005年の日本食を摂取したマウスと比較して長く、長寿だった。

 このことから、75年と90年の日本食を摂取したマウスは、老化の進行が遅延していることが確認された。パッシブアボイダンスの結果より、特に75年の日本食を摂取したマウスは、学習記憶能が良好な成績だった。加えて、75年の日本食を摂取したマウスは、がんの発生率が最も低いことが認められた。以上より、75年頃の日本食は老化を遅延し、長寿に有効であることが示唆された。

 日本食については、これまでも世界中で注目され、研究も行われてきた。海外では日本食ブームもおこっている。しかし、これまでの研究は単一の食品成分の摂取による影響を見ているものがほとんどであり、「日本食」まるごと摂取がどう影響するのかについて解明されたのは初めてだ。

 同研究グループは、現代の食生活を見直し健康に加齢し、個人のQOL(quality of life)を向上させるための重要な手掛かりになるとしている。さらに、老化性疾患の予防に役立つ「日本食」を世界へアピールすることが期待できるとしている。(編集担当:慶尾六郎)