「予知できないなら原発廃炉を選択すべき」。リスクを回避する賢者の選択といえよう。過去の歴史の中で、火山噴火による火砕流到達地点にある原発を廃炉にすることは、未来の人類のために必要な選択だ。経済活動に影響するか否かは、少なくともこのケースでは廃炉是非の判断材料に加えるべきでない。即刻、国が廃炉検討を指示すべきだろう。では、そのような原発があるのか。九州にあった。
共産党の機関紙「しんぶん赤旗・日曜版」5月11日号が伝えた鹿児島県にある九州電力川内(せんだい)原発がこれにあたるという。
しんぶん赤旗日曜版によると気象庁の火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東大名誉教授)が「川内原発の立地は認められない」と断言している。理由は超巨大噴火に伴う火砕流が過去に川内原発の立地点を何度も襲っていることがわかっているからだという。
ひとつは霧島の加久藤・小林カルデラ、桜島の姶良(あいら)カルデラ、3つは開聞岳の阿多カルデラ。これらは川内原発の敷地まで火砕流が到達したという。
では、なぜ、即刻、廃炉を検討させないのか。規制委の新基準(火山対策)では「原発の運用期間中に噴火の可能性が十分小さいと事業者が判断すれば、継続的にモニタリングするだけでよいとの「抜け道」(共産党)があると問題を指摘する。
モニタリングで噴火が予知できれば原発停止の対策がとれるということらしいが、赤旗日曜版は、藤井会長が「川内原発に影響するような超巨大噴火を予知することは、今の火山学では無理」と話していることを伝える。
しかも、新基準作成時に「原子力規制委員会から火山噴火予知連絡会に相談はなかった」(藤井会長)と指摘する。
藤井会長のコメントを読ませていただくと「どのくらいの期間、マグマが溜まれば超巨大噴火に至るのかの研究が始まったのは世界的にみてもここ数年。過去の噴火間隔から次の噴火時期を予想することは困難であり、原発の運用期間である最大60年の間に噴火があるかどうかは判断できない。運転期間中に噴火があるかどうかで立地の適否を判断するなら、分からないから立地は認められないということになるのではないでしょうか」と提起する。まさに、リスク回避からすれば当然の帰結だろう。
九州電力はこの問題提起にどうこたえるのか。規制委員会の新基準に対応しているのだから、法的には問題ないからと無視するのだろうか。ことは人類全体の問題、地球環境全体の問題として考えるべき問題だと思われる。
さらに火砕流の問題に加え、火山灰や避難計画の問題もあるだろう。東電福島第一原発事故の現況をみると、限りなくゼロに近くともリスクが残る限り、リスクは根絶させることが必要だ。東電福島第一原発事故の処理に数十年、さらに、環境被害は今も広がっている。今月7日にも岩手(釜石市)や栃木(鹿沼市)の野生ワラビやゼンマイが出荷制限された。これは環境への影響を示すもの。
出荷制限は、福島はもちろん、青森、岩手、宮城、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、山梨、長野、静岡でも制限品目が出ている。これをみても影響の大きさはみてとれる。同じことが九州で発生したらどうなるのか。仮定するのではなく、仮定する必要がないよう措置することが深刻な原発事故を経験している日本のとるべき選択だと強調したい。
この問題は後半国会でも大いに取り上げ、二度と原発惨事を引き起こさないという国の姿勢の具現を導き出すべきだろう。(編集担当:森高龍二)