スマートフォンの普及は目を見張るものがある。これによりネットワークを介した動画やゲーム、ソーシャルメディアといった多様なサービスへのアクセスが飛躍的に容易になっている。この結果、特に、高校生においては、メッセージ・アプリを含むソーシャルメディアの利用が急速に進むなど、従来のメールや通話とは全く異なる新しいコミュニケーションの形態が拡大している。
このような中、ネットへの依存傾向についても、パソコンでのネット利用が中心だった時代のオンラインゲームなどへの依存とは異なる時間や場所を選ばないスマートフォンを用いたソーシャルメディア依存といった、新たな形態の依存傾向が増加しているのではないかと懸念されているのだ。
これを受け、総務省情報通信政策研究所では、東京大学情報学環 橋元良明教授ほかと共同で、高校生の中で最もネット利用が進んでいると考えられる、東京都内の高校生に対する大規模な調査研究を実施した。
この調査研究では、スマートフォン・アプリの利用実態、家庭や友人関係などの利用を取り巻く環境、及びこれらとネット依存傾向の関係を分析することにより、依存傾向に陥りやすい環境等を明らかにすることを目的とした。東京都教育庁の協力を得て、都立高等学校を対象とした調査を実施。調査協力校は都立の全日制及び定時制の高等学校154校、調査手法は郵送法による無記名自記式質問紙調査。 調査対象は各高等学校において、各学年1クラスずつ抽出(一部調査実施できなかった学年有)で、有効回答数は合計1万5191票だった。
その結果、高校生でネット依存傾向が「高」い生徒は4.6%となった。依存傾向「高」の割合は、男子3.9%、女子5.2%と女子の方が高い。学年別では、1年生5.2%、2年生4.8%、3年生3.7%と低学年の方が高い。
スマートフォン/フィーチャーフォンでのネット利用時間は、依存傾向「高」の生徒は一日262.8分。依存傾向の高低を問わずソーシャルメディアが長く、とりわけ女子は男子の2倍だった。
スマートフォン/フィーチャーフォンのサービスごとの利用時間は、「ソーシャルメディアを見る」「ソーシャルメディアに書き込む」がそれぞれ全体では57.2分、32.0分。これを男女別に見ると、男子は37.3分、21.2分であるのに対し、女子はそれぞれ74.4分、41.4分と2倍。他方、「オンラインゲームをする」の平均利用時間は、男子(27.3分)が女子(13.8分)の2倍となった。
依存傾向「高」の生徒の利用時間は、「ソーシャルメディアを見る」が113.5分、「ソーシャルメディアに書き込む」が78.8分等と全体の2倍。依存傾向「高」の生徒は、「ソーシャルメディア上だけの友だち」が93.1人。
また、「ひまさえあれば、スマートフォンでネットを利用している」は全体では42.6%、依存度「高」では76.7%だった。依存傾向「高」の生徒のうち、「ネットのしすぎが原因で、引きこもり気味になっている」は49.0%、「ネットのしすぎが原因で、健康状態が悪化している」は39.8%、「ネットのしすぎが原因で学校に遅刻したり、欠席しがちになっている」は35.8%で、いずれも全体平均の4倍(値は「いつもある」「よくある」「ときどきある」の合計)だった。
高依存の高校生が4.6%とは多いのかどうかはよくわからないが、ネットのしすぎで引きこもりぎみになったり、健康状態が悪化したりとは、尋常ではない。世の中はどんどん便利になっていくが、その分弊害も多い。(編集担当:慶尾六郎)