ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンと積水ハウスが、大阪グランフロント内の「住ムフムラボ」で共創プログラムとして季節ごとに開催している「対話のある家」が一周年を向かえ、それを記念した特別篇が6月30日まで開催されている。
夏になるとホラー系の話題が多くなる。怪談やホラー映画などを見て恐怖を感じると、涼しいと感じるからだ。実はこれには科学的な根拠もある。恐怖を感じると血流量が減り、体の表面温度が下がる。そのため、汗の量も減って「涼しい」と感じるのだ。背筋がゾッとするのも、そのせいだと思われる。
そんなホラーに付き物なのが「暗闇」だ。人間は、本能的に暗闇を恐れる。そこに何かが潜んでいると思い、直感的に警戒する。見えるはずのものが見えない、もしくは見えないところに何かが潜んでいる気配がもたらす恐怖は計り知れない。ところが、そんな暗闇を恐怖の対象ではなく、人と人とのコミュニケーションを深めるためのエンターテインメントに仕立て上げた試みがある。それがダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)だ。
DIDは、1988年にドイツで、哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案により誕生した。
信頼とコミュニケーションをベースにしたソーシャル・エンターティメント。「純度100%の暗闇」、「チームで体験」、「視覚障害者によるアテンド」という世界共通の3つコンセプトのもと、世界30カ国・約130都市で開催されている。日本では、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン」が東京・神宮前で長期開催しているほか、大阪では「グランフロント大阪」の積水ハウスが展開している「住ムフムラボ」で、同社との共創による、関西初の長期開催プログラム「対話のある家」として、住まいや暮らしに焦点を当てた独自プログラムで季節ごとに期間限定開催され、昨年4月のオープンより既に約5000人が体験している。
ちょうど今、「住ムフムラボ」内の会場では、DID「対話のある家」一周年を記念した特別篇「まっくらな中で健康な家づくりにチャレンジ!」が6月30日(月)まで開催されており、DID初の、暗闇での「ものづくり」を取り入れていることで注目されている。
実際に体験してみると分かるが、一筋の光もない真の暗闇の中にいると、最初の内こそ恐怖感もあるものの、参加者同士がひとつの家族として協力し合いながらプログラムを進めて行く内に恐怖感は消え、その代わりに、視覚に頼っているときには分かりにくかった、人と人とのコミュニケーションの大切さや、人との対話の温かさなどが心に沁みてくる。暗闇の奥にあるものが得体の知れない存在ではなく、温かい血の通った人間だと気付いたときの安心感は、他では絶対に味わえないものだ。有料で大人は3500円と、一般のアトラクションなどと比較しても安価ではないイベントでありながらリピーターが多いとのことだが、近頃の人々が物質的なものではなくふれあいや、コミュニケーションに価値を求めており、「もの」から「こと」へ、「こと」から「こころ」へと消費行動が変化してきたひとつのあらわれではないだろうか。
なお、特別篇終了後の7月3日(木)からは、引き続き「僕たちの夏休み」をテーマにした夏のプログラムがスタートする。今回は、暗闇の中に「田舎のおじいちゃんの家」が再現され、親子で一緒に体験すると、さらに面白い内容になっているという。まだ体験したことのない人は、ぜひ一度、体験してもらいたい。世の中には、ゾッとする暗闇だけではなく、ホッとする暗闇もあるのだ。(編集担当:藤原伊織)