気象庁の発表した今夏の長期予報(6月から8月)によると、今年はエルニーニョ現象の発生が予測されているため、冷夏となる可能性が高いとのことだ。
異常な酷暑であった去年と比べると過ごし易くて良いのではないかとも思われるが、実は経済にとってはマイナスの影響が小さくは無いという。
気象庁ではエルニーニョ現象を、「南米ペルー沖から日付変更線付近にかけての海域において月間の平均海水面温度が半年以上の期間、平均値より0.5度以上高くなった場合」と定義している。発生すれば5年ぶりということになるが、専門家によると今回のエルニーニョは前回よりも規模が大きく、1997年以来の本格的なものになりそうとのことだ。
エルニーニョは大気の状態にも大きな影響を与える。日本では平年と比べ偏西風が南寄りに吹くため、太平洋高気圧の張り出しが弱くなる。そのため気温が上がりにくくなったり、梅雨が長引き日照時間が低下する恐れがある。真っ先に懸念されるのは農作物への影響で、米やジャガイモ、人参など特に野菜類に関しては不作となり、値段が高騰する可能性が高い。
また、エルニーニョの発生は個人消費にも大打撃を与えるという。スーパーやコンビニ等の小売店では、ビールや清涼飲料水の売上低下が懸念されている。他にも夏物衣料や季節家電、旅行やレジャー関連といった幅広い分野の消費にも悪影響を及ぼしそうだ。第一生命経済研究所の試算によると、仮に今年7月から9月期の日照時間が冷夏であった93年並ならば経済成長率を約0.9%程度押し下げることになるという。
エルニーニョ現象の影響を受けるのは当然日本だけではない。マレーシアやフィリピンでは水の安定供給を維持するために既に政府が動き始めている。また、インドネシア政府は農家に向けて、今年は作付けを早めに行うよう指導している。他にもオーストラリアやインドでは大規模な干ばつの発生が危惧されている。
09年にエルニーニョ現象が発生した時の教訓を生かし、現在は各国とも食料の備蓄量を増やしている。しかし、世界規模で食料不足が起きればやはり経済的損失は大きい。エルニーニョ現象は不規則に発生するため、事前にその規模を正確に予測することは未だ難しい。今年は一体どんな夏になるのか。長い梅雨が文字通り日本経済への冷や水とならなければ良いのだが。(編集担当:久保田雄城)