近時、スマートハウスやスマートタウンが話題を集める住宅市場。一方で、昨年に発生した東日本大震災以降「絆」に対する意識が高まり、二世帯住宅にも注目が集まっているという。中でも近時は、従来の形とは異なる二世帯住宅が登場し、各社とも注力しているようである。
こうした二世帯住宅に近時もっとも注力している住宅メーカーの一つが旭化成ホームズである。4月には大阪ガス・東京ガスとともに、二世帯住宅において、家庭用燃料電池「エネファーム」と太陽光発電でつくった電気と熱を2世帯間で融通し、光熱費ゼロ、CO2排出量差し引きゼロを実現するシステムを共同開発したと発表。戸建の二世帯住宅の世帯間でエネファームの電気と熱を融通するのは初であり、旭化成ホームズが発売する「へーベルハウス&NiCO(アンド ニコ)」に、業界で初めて本システムを採用している。また、8月11日からは新たな同居の形として、親世帯と子世帯と「単身の兄弟姉妹」も共に暮らす、へーベルハウス「2.5世帯住宅」の発売を発表。これは、2010年の国勢調査の結果、近年の晩婚化・非婚化・離婚率の上昇などから、60代世帯主の家族ではこれまで最多であった夫婦のみの世帯に代わり「親と単身の子」で暮らす世帯が最も多くなっていることを受けたもの。従来の2世帯同居という居住形態には収まらないこのような家族の住まい方を「2.5世帯同居」と命名し、単身の兄弟姉妹も共に暮らすからこそ得られる豊かな生活を提案する商品「2.5世帯住宅」として発売するに至ったという。
また、住友林業が資材提供・技術支援を行う、全国の地域優良建設会社257社(2012年2月末日現在)の会員からなるイノスグループは、親と子が適度な距離感を保ち、お互いのライフスタイルやプライベートを尊重する住まい、イノスグループ・コンセプト商品「YORiSOI(よりそい)」を3月27日から発売している。この住宅は、各世帯が独立したプランとなっており、長屋と呼ばれる形態の建物。従来の二世帯住宅とは違い、建物内で共有するスペースや行き来のできる開口部などはなく、二つの世帯をつなぐ自由な空間として、趣味の作業場や近隣とのコミュニティスペースに使える屋根の付いたピロティ部分を備えたものとなっている。これにより、近くに住んでいて程よい距離を保ちながら、快適に二つの世帯が暮らすことのできる住まいを提案している。
さらにパナホームも、大家族を楽しめる空間や家事楽収納で、快適にくらせる二世帯住宅『つどいえ(two・do・ie)』を発売。家族が集うオープンなLDK、くらしにゆとりをもたらすストレスフリー空間など、大家族を楽しめる空間を提案している。こちらは、近年の二世帯生活の考え方が、子が親の面倒をみる義務感が背景にある消極的なものから、価値観やライフスタイルが異なる親子同士がお互いを尊重しながら合理的に暮らす積極的なものへと変化してきていることを受けたものとなっている。
時代ごとにニーズに合せて変化する住宅であるが、昨年の震災を機にした新たな形の二世帯住宅は、時代の潮流を踏まえたスマートハウスとは異なり、一時期の流行に傾倒した商品とも言える。こうした形の二世帯住宅がどこまで今後も継続的に必要とされるのか、注目して見守りたいと思う。