スマートフォンやタブレットPC、電気自動車やポータブル医療機器など、充電を必要とする機器が増える中、電子機器メーカー各社がしのぎを削るワイヤレス給電市場。市場調査会社IMS Researchによると、ワイヤレス給電機能機器の出荷台数は2015年に1億台を超え、2016年までに約50億米ドルに成長すると予測されるなど、今もっとも注目を集める市場の一つと言えるであろう。この予測を裏付けるように、今年後半に入って以降、各企業の動きが活発化している。
7月6日、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが3種類のワイヤレス充電リファレンス・デザインを発表。リファレンス・デザインとは、半導体メーカーが製品メーカーに提供する設計図のこと。高い技術の実装が容易になるため、市場が拡大・発展するための起点ともなるものである。今回フリースケール発表したのは、タブレット向け・スマートフォン向け・マルチセルバッテリパック向けの3種類。いずれも端末自体は普及しているものであるため、今回の技術を搭載した製品が市場に登場するまでに、あまり時間を要しないのではないだろうか。
また7月9日にはTDKが、スマートフォンをはじめとしたモバイル機器向けのTDKワイヤレス給電用コイルユニットを開発したと発表。スマートフォン側に搭載するための受電用コイルユニットは業界最薄クラスの厚さ0.57mmを達成しているという。また、コイルも薄型ながら抵抗値の上昇を極力抑えており、送電効率もWPC規格Qi認証に必要な水準を達成した製品となっている。現段階では出力電流は0.5A~0.6A程度だが、厚さ0.50mmでかつ出力電流も同等以上の製品についても開発を開始し、2013年からの量産を目指すという。
さらに、7月13日には米国のビシェイ・インターテクノロジー社が、鉄粉をベースとするWPC(Wireless Power Consortium)規格に準拠した、5V携帯機器のワイヤレス給電向けの受信コイルIWAS-3827EC-50を発表している。耐久性のある構造で透磁率の高いシールド性能を持ち、10Wまでの受電回路において70%以上の高効率を実現。寸法は38mmx27mmと、48mmx32mmのIWAS-4832FF-50受信コイルと比べて33%もの小型化も実現しているという。
その他、アジレント・テクノロジーが、ワイヤレス給電用アンテナの入出力におけるAC(交流)電圧、電流、電力、電力効率の解析ソフトウェア「E5061Bネットワーク・アナライザ用ワイヤレス給電アンテナ解析ソフトウェア」を発表。日本電業工作とボルボテクノロジー・ジャパンは、電気自動車にワイヤレスで給電する高効率レクテナの試作に成功したと発表するなど、これまでにない程の活発さをみせている。気になる点といえば、海外企業の方が活発に見えることであろうか。今後市場の拡大が見込まれる市場であるだけに、日本企業にも積極的な動きを期待したいところである。