1978年に全国建設労働組合総連合が「大工や左官職人などの腕と信用を再確認する日」として6月25日を「住宅デー」と制定した。それ以来、6月は毎年25日を中心に全国で「住宅デー」が開催されるようになった。どうして、よりにもよって梅雨のこの時期なのだろう。何でも、スペインの建築家・アントニオ・ガウディの誕生日にちなんでいるのだとか。経緯はともかく、「住宅デー」では、日本全国各地の建設労働組合などが地元の住民に向けたイベントなどを開催し、普段はなかなか見ることのできない職人技術が見られたり、体験できたり、子供向けの企画や、住宅相談や耐震診断の受付など、盛りだくさんの企画で盛り上がっているところも多い。とくに今年の「住宅デー」では、来年に控えた消費税増税や相続税の改正など、消費者の住宅購入に対する関心も高く、住宅相談などにも熱が入っているようだ。
4月に消費税が8パーセントに引き上げられ、住宅業界では駆け込み需要の反動減が懸念されたものの、1997年の消費税引き上げ時の経験を生かして業界全体が早くから対策を講じたことや、すまい給付金や住宅ローン減税などの効果もあり、予測以上の大きな混乱はなく、すでに持ち直しつつもあるようだ。とはいえ、来年の10パーセントへの増税のときも同じであるとは限らない。それどころか、安穏としていると今度こそ、増税後の日本の住宅市場が大きく冷え込んでしまうことにもなりかねない。
これに対し、住宅メーカーやハウスビルダーの対策としては、大きく3つが考えられる。
1つは、単純に価格を下げたり、オプションなどの特典をつけたりするやり方だ。消費増税分の差額をオプションサービスなどでカバーすることで、増税分の損得を相殺する。これだと、確かに顧客には分かりやすい。しかし、当然ながら業者側の利益率は下がり、負担は大きくなってしまう。
2つめは、付加価値を提示することで住宅の価値観を高めるやり方だ。たとえばパナホームが提供している、ゼロエネを超える省エネ・創エネ住宅「Blue Energy」ブランドや、あるいは積水ハウスが独自の構造システム「ユニバーサルフレーム・システム」で設計の自由度と構造強度のべストバランスを実現した高級住宅「IS(イズ)」シリーズなどがある。価格を下げるのではなく、住宅の魅力を高めることで、将来的に顧客の利益に還元しようというやり方だ。しかし、これらは憧れであり理想であっても、やはり富裕層をターゲットにしたものであることは否めない。ランニングコストは下がっても、初期費用がかさむのであれば、住宅購入のハードルは当然、高くなってしまうだろう。
そして3つめは、現在販売している住宅の「無駄を見直す」という方法だ。これについては、アキュラホームが面白い試みを行っている。
アキュラホームでは、同社グループの約1000人の従業員、及び1000人の大工や左官職人、さらには同社が主催する工務店ネットワーク・ジャーブネットの会員3000人、合計5,000人から「KAIZEN案」を募り、それをもとに現行の住宅について、資材や工法の無駄を見直したり、これまで使っていなかった資材や工法、デザインのアイデアを盛り込んだりして設計した「試行棟」を建設し、検証を行っているのだ。その中で「工事=お金」と位置づけ、顧客が払わなくていいお金(工事)を徹底的に排除するとともに、バリューアップも図る。実際、地盤改良杭の見直しや無駄な残土処分の削減、外部掘削削減などを行うことで、「土」だけでも13万円分の削減を行うことに成功した。もちろん、これによって品質が劣化するということは一切無いという。
住宅に求めることは人それぞれ、家族構成やライフスタイルによっても様々だが、快適に暮らしたいというのは万人共通の思いだろう。一円でも安く手に入れたいのは山々だが、その為に快適さが失われてしまっては本末転倒だ。また、背伸びした物件を購入しても、その後の生活にまで影響するような資金計画では、やはり快適な暮らしとは言い難い。現在、もしくは将来的に住宅購入を考えている人は、自分の家庭にとって、何が一番、得で、快適な暮らしなのか、住宅デーを機会に考えてみるのもいいかもしれない。(編集担当:藤原伊織)