国土交通省は6月10日、2014年版の土地白書を公表した。キーワードは不動産投資信託(REIT)だ。REITによる物件の取得が活発になるなか「投資分野の多様化も進んでいる」と指摘。REIT創設期の01年度末はオフィスが取得資産の91%を占めていたが、13年度末には47%に低下し、商業施設や住宅、物流施設などに投資先が広がっている。また、13年度の不動産取引額は前年度に比べ72%増の4兆1080億円。伸び率は過去10年で最大だった。賃料の改善期待が高まり、REITや外資系ファンドが物件取得を加速しており、活発な不動産取引は地価の押し上げ要因となっている。
REITは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなど複数の不動産などを購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する商品だ。不動産に投資を行うが、法律上、投資信託の一種とされている。通常の株式会社であれば、所得に対して法人税がかかり、内部留保も差し引かれ、その残りを原資として配当金が支払われる。一方、REITの場合は、収益の90%超を分配するなどの一定の条件を満たせば、実質的に法人税がかからず、内部留保もないので、収益がほぼそのまま分配金として出されるため、一般の株式などに比べると、投資家に分配金を出しやすい金融商品といえる。REITは、高い配当利回りが人気で、個人投資家の運用手段として定着してきた。東証REIT指数の10日終値は1547.59と年初来の上昇率は2.2%。堅調な値動きが不動産市況の底堅さを反映している。
ところで、米国のREITに目を移すと、病院や有料老人ホームなどのヘルスケア施設やインフラへの投資がそれぞれ10%前後を占め、日本に比べると投資先が幅広いと白書は紹介している。日本でもさまざまな分野での投資が進んでいるが、今後はヘルスケア施設へのREITマネー導入に向け、指針策定など環境整備を進めるべきだと強調されていることから、この分野でのREIT活用が期待される。
かつて、日本は不動産バブルを経験した。投機目的で価値の無い土地までもが高値で取引された。そしてバブルの後遺症を克服するために日本は長い時間を費やした。今、回復しつつある地価はバブル期とは異なっている。土地の収益性や利便性を重視した実需による地価の上昇だ。今後もこの傾向はさらに強まるだろう。それぞれの地域が、特色を活かしオフィスや住宅需要などを踏まえた魅力的なまちづくりを進め、不動産の本当の価値を高めていくことが、バブルとは異なる健全な地価の上昇に繋がるだろう。(編集担当:久保田雄城)