今、住宅業界がにわかに活気づいている。その原因は2015年1月に迫った相続税の改正だ。来年10月に予定されている消費税10パーセントへの引き上げも相まって、増税前に税制の優遇措置が受けられる二世帯住宅や賃貸併用住宅への建て替えを検討する家庭が増えている。
相続税は、相続財産から基礎控除額を引いたものが課税対象となるもので、基礎控除額は、定額控除と比例控除(法定相続人の人数によって変動する)の合算で計算される。
たとえば、現行の計算では、定額控除は5000万円。比例控除は1000万円×人数となっている。つまり、一億円の財産を法定相続人3人で相続する場合、1億円―5000万円(定額控除)-3000万円(比例控除1000万円×3人分)となり、基礎控除額は8000万円、残り2000万円が課税対象となる。しかし、15年の1月1日からは定額控除が3000万円に引き下げになるうえ、比例控除も600万円×人数分の計算になるため、同じ条件で1億円の財産を相続した場合、1億円-3000万円-1800万円(比例控除600万円×3人分)で、基礎控除額は4800万円、課税対象額と5200万円になり、現行制度よりも3200万円も課税対象額が上ってしまうことになるのだ。
また、財務省では基礎控除額が引き下げられることによって、課税対象者の割合が改正前の4パーセントから6パーセントに増えると試算している。つまり、これまでは「お金持ちだけの話」で、相続税なんて他人事のように思っていた人の中にも、もしかすると今回の改正によって課税対象者になる可能性も出てくるというわけだ。
相続税対策としては、評価額が減額され、課税対象額も下がる「二世帯同居」と、貸家建付地として評価額減と小規模宅地等の特例の賃貸部分への評価額減を併用することで大幅な節税が見込める「賃貸併用住宅」の2つの方法がある。
住宅メーカー各社にも今、この相続税に関する相談が増えているという。日本最大級の工務店ネットワークジャーブネットを主宰するアキュラホームでも、相談が多く、リーフレットを配布するなどで対応を行っている。
二世帯住宅の建て替えに際し、同社が最も気を配っている点の一つに、生活者の生活時間やライフスタイルがある。現在は良好な関係を保っていても、いざ二世帯で同居するとなると、親世帯と子世帯では生活時間のライフサイクルが異なるので、トラブルに発展することも珍しくない。一緒に暮らすにあたり、設計段階から、両世帯の程よい距離感を大切に考えているという。また、収納スペースも充分に確保することで、大家族の二世帯住宅でも、スッキリとした暮らしを提案しているという。
税金のことを考えると、今が二世帯住宅や賃貸併用住宅を検討するタイミングであることは間違いない。しかし、金銭的なことだけに左右されるのではなく、その家で将来に渡って生活していくということを最優先に考えたいものだ。(編集担当:藤原伊織)