20世紀末から開発を進めてきた燃料電池自動車(FCV/Fuel Cell Vehicle)が俄然現実味を帯びてきた。
トヨタ自動車は、セダンタイプの新型燃料電池自動車(FCV)を公開し、発売時期と日本での車両本体価格の目途、販売チャネルなどを公表した。
トヨタ製燃料電池車は、日本国内で、2014年度内に販売を開始スタートさせるという。販売ディーラーは、トヨタ店とトヨペット店。当面は、水素ステーションの整備が予定されている地域およびその周辺地域の販売店が中心となる。具体的には、一般社団法人「次世代自動車振興センター」の燃料電池自動車用水素供給設備設置補助事業における、2013年度と2014年度1次/2次公募で交付決定がされている都道府県で、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、愛知県、大阪府、兵庫県、山口県、福岡県となる模様だ。
トヨタの発表によると車両価格は700万円程度を予定しているという。日本以外の米国、欧州では、2015年の夏頃の発売に向け準備を進めるという。価格は今後決定する。
トヨタは、次世代環境対応自動車として燃料電池車を含めて、燃費向上およびエミッション低減を目指す「省エネルギー」、電気や水素をはじめとした代替燃料の利用を促進する「燃料多様化への対応」、さらには、「エコカーは、普及してこそ環境への貢献」を基本方針として環境技術開発を進めてきた。
この「燃料多様化への対応」おいて、トヨタは水素を将来の有力なエネルギーと位置付け、当然ながら水素に注目してきた。水素は、さまざまな一次エネルギー、なかでも太陽光や風力などの再生可能な自然エネルギーを活用して製造が可能な燃料だ。
電気に比べてエネルギー密度が高く貯蔵・輸送も容易なことも特徴として挙げられる。家庭用や自動車用燃料だけではなく、一般家庭の燃料電池発電への活用など幅広い用途への利用が特徴だ。
FCVの開発にトヨタは、ハイブリッドカーを発売する以前の1990年代から20年以上前から取り組んできた。今回の新型車のために研究を重ね、水素と酸素の化学反応により発電をするFCスタックや燃料となる水素を貯蔵する高圧タンクを中心としたFCシステムを自社開発した。2002年以降は、日本の東京や米カルフォルニアでSUVタイプのFCVをリースという形で導入してきた実績がある。
トヨタが販売を予定している新型FCVは航続距離は約700kmを確保しながら、燃料の補給(水素の満充填)に要する時間は3分程度とガソリンエンジン車と同レベルとなっている。また、FCVが走行中に排出するのは、水素と酸素の化学反応で発生した水だけ。
新時代のトヨタ製FCVは、「自動車用燃料の多様化に対応し、走行中はCO2や環境負荷物質を排出しない」と「現状のガソリンエンジン車と同等の利便性」を両立。サステイナブルなモビリティ社会の実現に貢献する究極のエコカーとして高いポテンシャルがある。
今後ともトヨタグループ各社は、燃料電池バスやトラック、家庭用燃料電池による発電、燃料電池フォークリフトなどの技術開発に取り組んでいく。
久しく燃料電池車についてのニュースが届かなかったが、この新型FCV。1999年のころには1台数億円と言われた価格が700万円まで下げられた。驚異の技術力と言える。今後はホンダの動向に注目が集まりそうだ。
トヨタの公式ホームページでは、新型FCVの走りのイメージを44秒の動画で紹介している。(編集担当:吉田恒)