議論を呼ぶトヨタ自動車の決算に見る法人税制

2014年06月15日 19:19

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トヨタ自動車の会計処理は合法的なものであり、決して脱税ではない。

 トヨタ自動車<7203>が過去5年間法人税を納めていなかったという話がネットを中心に駆け巡った。2014年3月期の決算会見で同社の豊田章男社長は、「日本においても税金を納めることができる状態となった」という発言があった。大手メディアは同社の好調な業績を伝えるばかりで、この発言をクローズアップするメディアはなかったが、共産党議員がネット上で取り上げ、機関誌にも詳細に報じられたことから、話が広がり議論を呼んでいる。

 トヨタ自動車が「法人税ゼロ」となったきっかけは、08年のリーマン・ショックによる業績の落ち込みだ。08年秋のリーマン・ショックの影響で同社は販売台数が急減。しかし、その後業績は回復し、この5年間に連結で2.1兆円、単体でも0.9兆円の税引き前利益を計上している。にもかかわらず、法人税ゼロとなったのは、生産の海外移転にともなう収益構造の変化によって、大企業優遇税制の恩恵をふんだんに使える体質をつくり出したからだ。同社は、海外生産を08年度の285万台から12年度には442万台に増やし、428万台の国内生産を上回る状況となった。この結果、「国内で生産し、輸出で稼ぐ」という従来の姿ではなく、「海外で生産し、稼いだもうけを国内に配当する」という収益構造に変化してきたのだ。そのうえ、09年度からは、海外子会社からの配当を非課税にする制度がつくられ、同社はこの制度の恩恵を受けたものと思われる。さらに、同社は研究開発減税などの特例措置を受けている。一方、同社は株主には5年間で総額1兆542億円もの配当を行い、内部留保の主要部分である利益剰余金(連結)も、2807億円上積みしているのだ。最初に問題提起した共産党は機関誌でこのように分析している。

 トヨタ自動車の会計処理は合法的なものであり、決して脱税ではない。しかし、日本を代表する大企業が税負担の軽減をフルに活用して株主に配当を行い、内部留保を増やしていることに戸惑いを感じる人は多い。エコカー減税など自動車メーカーに対する優遇政策の資金は、もとを辿れば税金なのだ。さらに、輸出企業は消費税をすべて価格転嫁でき、転嫁できない輸出分については「輸出戻し税」として還付を受けられるため、消費税を負担することはない。消費増税など個人においては重税感が増す一方で、法人の優遇があまりにも際立てば、大企業に対する優遇措置は批判の対象になりかねない。(編集担当:久保田雄城)