今やハイブリットカーは珍しくもない。1997年にプリウスがデビューして17年。2000年初頭に比べて近年は年間販売台数が5倍に達している。街中を走ると道路のあちこちで見かけることだろう。電力とガソリンを併用して走るハイブリットカー。重量が重いミニバンへの応用に向けて、燃費の効率を上げることが課題だったが、それをクリアし、13年にはトヨタのノア、ヴォクシー、ホンダのフリードなどが実用化。丸の内では、エンジンを発電のみに利用して、蓄電した電力だけで動くシリーズ・ハイブリット式の無料シャトルバスも運行している。
華々しく活躍しているハイブリットカーだが、その影に埋もれてしまっているのが水素自動車の存在だ。水素自動車に力を入れているのはマツダ<7261>である。マツダは1990年代からBMWと共同開発を進め、2009年にはフォードと提携、RX-8水素エンジン搭載車を発表。しかし残念ながら、未だ実用化のめどは立っていない。トヨタ<7203>とホンダ<7267>も水素電池を燃料とする車、FCVに力を注ぎ、15年には販売できるよう目標に掲げているが、それが実現するまでにはいくつものハードルがあるようだ。
水素自動車の利点は燃料を石油資源に頼らないところにある。水素発電の原理は、水の電気分解と同じだ。車に燃料としての水素を積み、空気中の酸素と結合させ化学反応を起こさせる。それによって得られるのは水と電気であり、車の排気口から出る白い煙は排気ガスではなく水蒸気なのである。
問題点は、燃料である水素を補給するステーションの設置に莫大な費用が見込まれること。ガソリンスタンドの設置費用が数千万円であるのに対し、水素ステーションはおよそ6億円かかるとも言われている。また、そもそも水素利用が考えられる発端となったのは、石油を精製する際に大量に生じていた水素ガスへの対策にあった。しかし近年の技術の発達によって水素ガスの発生量が抑えられるようになり、燃料としての水素をどう確保していくのかも開発者の頭を悩ませる要因のひとつとなっている。究極のエコカーとして注目された水素自動車だが、運用までの道のりはまだまだ遠いのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)